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中国の科学と文明 ロバート・テンプル:著

 「近代」農業、「近代的」造船、「近代的」石油産業、「近代的」天文学、「近代」音楽、十進法、紙
幣、傘、釣り竿のリース、一輪手押し車、多段ロケット、銃、水雷、毒ガス、落下傘、熱気球、有人飛
行、ブランデー、ウイスキー、将棋、印刷術、さらに蒸気機関の基本機構までことごとく中国に由来こ
とを知ると西洋人のみならず中国人も同じように驚くのである。
 舵や羅針盤や複数マストのような船舶と航海の技術が、中国から入ってこなかったら、ヨーロッパ人
による発見の大航海は行われなかったはずである。コロンブスはアメリカまで船を進めなかっただろう
し、ヨーロッパ人は植民地帝国を築かなかっただろう。
 馬の背に乗るためのあぶみが中国から入らなかったら、中世の騎士はきらめく甲冑をまとって馬に乗
り、嘆きの貴婦人を助けることはできなかっただろうし、騎士道時代も存在しなかっただろう。また、
銃砲と火薬が中国から入らなかったら、弾丸によって甲冑を貫かれて騎士が馬上から転落し、騎士道時
代が終わることもなかっただろう。
 中国から紙と印刷技術が入って来なかったら、ヨーロッパではもっと長い間、本を手書きで写し続け
ただろう。そして、読み書きはあまり普及しなかっただろう。
 ヨハネス・グーテンベルグは活版印刷術を発明「しなかった」。それが発明されたのは中国である。
ウィリアム・ハーヴェイは体内の血液循環を発見「しなかった」。それが発見された−あるいはそれが
常に想定されていた−のは、中国であった。アイザック・ニュートンは運動の第一法則を最初に発見し
た人間では「なかった」。それは中国で発見されたのである。
 わたしたちの周囲の到る所にあって特に関心をもたないような多くのものが実は中国に由来するとわ
かるとこれらの多くの誤った考えがうち砕かれていく。わたしたちの偉大なる業績の一部が実はわたし
たちの手柄ではなく、よそからの借物にすぎなかったことがわかってくる。

「中国に対する西洋の負い目」より抜粋。

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