東藝術倶楽部瓦版 20160516 :現代経済学の矛盾とスマートシティ

 

おはようございます。

思い起こせば、4年に北京駐在するまでは、「東藝術倶楽部瓦版」という形でお送りしいましたね。

本日から、この瓦版の形を復活させたいと思います。

 

先週、木曜日、金曜日と朝から外出していたものですから、メルマガをお送りできませんでした。特に金曜日は千葉県柏市まで行ってきました。中国広東省深セン(土ヘンに川)市にある不動産開発企業の益田集団会長一行が、日本のスマートシティのモデルプロジェクトとなっている「柏の葉スマートシティ」を視察するというので、そのアテンドのために赴いたものです。

今年3月、私の北京駐在最後の中国国内出張となった山東省済南市での国際スマートシティシンポジウムに柏市の秋山市長が出席され、その際、シンポジウムに参加していた益田集団の子会社の社長が秋山市長と一緒に食事をしたのが縁となり、今回の視察の際にも秋山市長が一行視察に駆けつけてくれました。

 

この柏の葉ですが、確かに日本ではスマートシティプロジェクトとしての取り組みが最も進んでいると言われていますが、正直なところまだまだ未完成で、試行錯誤を続けながら真のプロジェクト実現に向けて歩み続けているところです。なぜなら、最も進んでいるというこの柏の葉でさえ、運営自体を完全事業化できておらず、運営資金ですら国の補助がなければ運営がままならないからで、ましてや開発コストを回収するとなると、その実現はさらにその先の話になっているからです。

柏の葉は、開発運営母体である三井不動産が従来有していたゴルフ場の跡地を開発したもので、土地取得等のコストが不要であったことで、一般の土地の再開発に比べて安価に進めることができたのです。このプロジェクトには国、地方自治体(柏市)、研究教育機関(東京大学、千葉大学)、民間企業(三井不動産、日建設計、日立、シャープ、東芝他)が参加し、完全事業化も含めてプロジェクト実現に向けて日々努力を重ねていますが、その道はまだ半ばという状態です。

 

このスマートシティ構想ですが、なかなかうまくいかない原因として、以下二つのことが挙げられます。

一つは、このスマートシティは現代経済学抱える典型的な矛盾を体現していることです。その矛盾とは、「最大利益の追求」と「効率の最大化」によって現代経済学が成り立っているということです。つまり、一方でマネーをたくさん稼ぐことを謳っておきながら(最大利益の追求)、その一方でマネーを切り詰めることを説いている(効率の最大化)のです。現代経済学では、マネーを精一杯回して世界を潤すのか、それともマネーを回さずに世界を潤そうとするのか、一体どちらなのでしょうか?

スマートシティ構想は、企業としては土地開発して、より付加価値の高い住宅、オフィス、商業施設等を提供してマネーを稼ごうとする一方、住民サイドからすれば、如何に価格を抑えて購入し、サービスを受けようとするわけですから、企業側もコストを抑えようと努力しなければなりません。資金投入すれば、いくらでも付加価値を高めることができますが、一方でそれを享受しようとするユーザーがいなくなります。現在の商品価値は、サプライヤーとユーザーとの間の微妙なバランスの上に成り立っているわけです。

ですから、まともに考えれば、この矛盾を抱えたままでは、うまくいかないのは当然です。しかもすべてがマネーが基準ですから、新たな研究開発、イノベーションにも必然的に限界が見えてしまいます。

 

もう一つの原因は、スマートシティ建設は常に成長、進化しているということです。「そこで完成」というゴールがなく、常に新たな付加価値、住民の快適性を求めて研究開発が進められています。もちろんここにも付加価値とコストとのバランスが必要ですから、現代経済学の矛盾に問題の発端があることは間違いありません。

 

さあ、それでは一体「経済」の本質とは如何なるものなのでしょうか?

そして、その答えはどこにあるのでしょうか?

それを一緒に「江戸」に学ぼうではありませんか!

 

高見澤

 

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年5月16日 22:11に書いたブログ記事です。

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