東藝術倶楽部瓦版 160704 :粕と糠漬け、恐るべし江戸の知

 

おはようございます。昨日は暑かったですね。私は終日クーラーの効いた部屋で論文書きに没頭していましたが、それはそれで疲れました。今日も朝から強い日差しを感じています。

 

さて、今日もまた食の話の続きです。

私は北京駐在中も、年始年末は日本に帰国して、両親の住む長野の田舎で年越ししていました。長野は日本で一番の長寿県であるように、今年で83歳になる両親は今も健在で、毎日畑仕事を難なくこなしています。長野県人が長寿なのは、やはり水、空気、食べ物、そして何と言っても自然です。自然の中にいると、驚くほど生命感を感じます。

 

ところで、今東京で私が食べている米は低農薬有機栽培の長野県産コシヒカリで、両親が作ったものです。この米を食べていると、外の米が食べられなくなります。

今多くの人が食べている米は、一般には精米した白米です。稲から収穫された米には籾殻が付いており、先ずはその籾を取り除きます。それが所謂「玄米」です。通常、米は玄米の形で長期保存されます。玄米は虫がつきにくく、白米にしてしまうと容易に虫に食べられてしまうからです。一般に白米として売られている米の中には、以前は虫がつかないよう防虫剤が添加されていることもありましたが、今はどうでしょうか。

 

玄米から白米に精米する過程で出てくるのが、所謂「糠(ぬか)」です。そう、糠漬けに使われる糠床の原料です。実は米の栄養素の大部分(約95%)はこの糠にあります。特に豊富に含まれているのがB1B2、ナイアシン(B3)、B6等のビタミンB群やミネラルです。ビタミンB群は代謝を助け、粘膜や皮膚の保護に欠かせません。肌荒れや疲れで悩んでいる人には必須の栄養素です。また、精神安定にも効果があります。

それなら玄米から糠を取り除いた白米には栄養素がほとんどないことになりませんか? そうなんです、白米にはほとんど栄養素がありません。米に白と書けば「粕」、そう、白米は粕(カス)なんです。我々は「霞」ならぬ「粕」を食べていることになるんですねぇ。

 

ところがですよ、江戸の人々には驚かされる事実がありました。糠漬けが発案されたのは江戸時代の初期と言われています。元禄以降、庶民を含め白米が食されるようになりましたが、精米する過程で出た糠を使って考案されたのが、この糠漬けだったのです。

白米を食べるようになると、ビタミンB1の不足から脚気になりやすくなります。ビタミンB群はいずれも水溶性ですから、糠に野菜を漬けるとビタミンB1を含む糠に含まれる栄養素が水分とともに野菜に吸収されます。つまり、糠漬けを食べることで、糠に含まれる栄養素を体内に取り組むことができるのです。もちろん江戸時代にそのような栄養素の知識があったかどうかは分かりませんが、本能的あるいは感覚的に知り得たのではないでしょうか。しかも漬物は発酵食品ですから、ビタミンにプラスされて酵素等の栄養価が高まるという一石二鳥の効果が得られるのです。恐るべし江戸の人々の知恵です!

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年7月 4日 16:22に書いたブログ記事です。

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