東藝術倶楽部瓦版 20161011 :メイドカフェの原点?「水茶屋」

 

おはようございます。今朝の東京は大分涼しくなりました。急激に寒くなっていくようなので、体調の管理には十分ご注意ください。

また、今、九州熊本は地震に続き阿蘇山の噴火で大変なことになっています。さらに台風による大雨なども加わり、踏んだり蹴ったりの状態ですが、これがその他の地域にも波及しないとは限りません。いつ、どこで、何が起こるかは予測することは不可能です。何が起きても即座に対処できるよう万全の体制を整えておくことが大事です。今の日本は、何か起きた時に対処不可能なものを作っているのですから、愚かというしか言いようがありません。

 

さて、本日は江戸の典型的な外食産業である「茶屋」についてご紹介したいと思います。茶屋と一口にいっても、茶葉を売る「葉茶屋」、料理や酒を提供する「料理茶屋」、芝居や相撲の手配をする「芝居茶屋」や「相撲茶屋」、遊郭で遊女を紹介する「手引き茶屋」(吉原では「引手茶屋」)、そして路傍でお茶を飲ませてくれる「水茶屋」などです。

この「水茶屋」ですが、今でいうところの喫茶店やカフェといったところでしょうか。

 

お茶の起源は古く、紀元前2700年頃の中国雲南省西南地域で初めて茶樹が発見されたという説が有力です。雲南省では今でも茶の古木が多くみられます。農業と漢方の租といわれる「神農」が野草と茶葉を食べていたという逸話があることから、当時は食材として使われていたのかもしれません。それが今のように嗜好品として飲まれるようになったのは、漢の時代であったといわれています。

そのお茶が日本に伝わったのは平安時代といわれており、最澄や空海などの遣唐使が中国から茶の木や種を持ち帰っていたとのことですが、奈良時代にはすでに到来していたのではないかとの説もあります。当初、このお茶は秘伝の薬として扱われていたので、一般にはお茶のことが知られていなかったようです。それが、鎌倉時代に臨済宗の開祖・栄西が『喫茶養生記』を書いて一般に広めたことで、中国から茶木を持ち帰った功績を独り占めにしたといわれています。今も昔も手柄の独り占めという増上慢の輩の性は変わりませんね。

 

室町時代に入り、「茶道」という茶の礼法が生まれる頃に、京の路傍で庶民にお茶を飲ませる茶屋が商売を始めています。茶屋では、移動式の炉と釜を置き、挽いた粉茶を茶筅で混ぜる抹茶方式と、茶葉を入れた布袋を釜に入れて煮だした煎茶方式があり、喉が渇いたときは煎茶、滋養や眠気覚ましには抹茶が好まれたようです。

 

江戸時代に入ると、葦簀をさし掛けただけの簡素な小屋で営業するようになり、手間のかかる値段の高い抹茶は敬遠されて、もっぱら煎茶専門となりました。

当時、水質があまり良くなかった江戸では、生水を避けるためにもお茶はなくてはならない飲料でもありました。しかも、炉と釜さえあれば誰でも簡単に始められるので、江戸中で競争が激しくなったようです。

 

宝暦年間(17511764年)、それまで比較的年配者が多かった「茶汲み女」に若い女性を採用するようになりました。やはりウエイトレスは若くて美人がいいというのは江戸も今も変わりません。中にはわざわざ評判の茶汲み女を見るために、飲みたくない茶まで飲みに来る客もいて、美人の看板娘を置く店ほど繁盛したようです。その頃のお茶代は4文(100円)から8文(200円)程度ですから、好みのウエイトレスがいれば毎日でも通いたくなりますよね。これがまた、店のチラシ広告として浮世絵(錦絵)の図柄ともなり、飛ぶように売れたものもあったようです。また、モデルになった美人の茶屋にも客が殺到し、中には長居をしたいばかりに50杯もお茶を飲んだという客もいたというのですから、男の性は古今東西変わらないものだと思います。

 

こうした状況があまりにもひどいということで、老中・水野忠邦は、天保の改革(18411843年)で水茶屋が若い女性を雇うことを禁止しましたが、水野が失脚するやいなや、若い女性の雇用が復活したようです。水茶屋はメイドカフェの原点かもしれませんね。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年10月11日 08:44に書いたブログ記事です。

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