東藝術倶楽部瓦版 20161201:涮羊肉と火鍋-中国の代表的な鍋料理、その起源は?

 

おはようございます。今朝の東京は雨、今日から12月ですが思ったほど気温は下がっていないようで、あまり寒さは感じられません。

 

さて、今日は少し江戸を離れて中国のお話をしたいと思います。昨日の瓦版で江戸の鍋料理のお話をしたので、中国の鍋料理についてもご紹介しておきたいと思った次第です。

 

中国には地方によって異なった様々な鍋料理があります。その中でも特に日本で有名なのが北方の「涮羊肉(Shuan Yangrou)」と「火鍋(Huoguo)」でしょう。

 

涮羊肉はいわゆる「シャブシャブ」です。銅製の先の尖がった鍋に、下から炭火で薬味(生姜、乾燥棗、ネギ、クコなど)を入れた湯を沸かし、薄く切ったラム肉やマトン、豆腐、野菜、キノコなどを軽く湯に通して食べるものです。昔から中国の北方や西北地域には放牧民族が多く羊が生活の重要な糧であり、回教徒が多いことから羊肉を食べる習慣が根付いていました。内モンゴル自治区はもちろんのこと、中国東北部や北京を中心とする華北地方では主に冬によく食べられていましたが、近年は一年中食べることができます。この涮羊肉はモンゴル周辺が発祥の地ではないかといわれ、唐の時代に普及し、元、明、清の時代には軍中の食事としても採用されていたようです。

 

もう一つ火鍋ですが、一般的には「鴛鴦火鍋(Yuanyang Huoguo)」と呼ばれる金属製の鍋を真ん中で二つに仕切り、片方には鶏ガラでとった「白湯(Baitang)」、もう片方には唐辛子と山椒が入った真赤々の「麻辣湯(Malatang)」を入れ、自分の好みによって具材をそれぞれのスープで熱を加えてから食べるものです。主に辛い料理で有名な四川省や重慶市など西南地方で食べられていた料理ですが、今では中国全土ばかりか日本でも食べることができます。こちらは四川省周辺が発祥の地だといわれますが、はっきりしたことは分かっていません。

 

この他にも地域によって特徴のある鍋料理があります。華北から東北地方にかけて食べられる「砂鍋豆腐(Shaguo Doufu)」は、土鍋に鶏ガラの白湯で豆腐、白菜、ネギ、春雨などを具材にして煮込んだものです。寒さの厳しい東北地方には酸っぱくなった白菜と薄く切った豚バラ肉を一緒に煮込んだ「酸菜白肉(Suancai Bairou)」は身体が温まります。中国西南に位置する貴州省には「酸湯魚(Suantangyu)」という多種類の香辛料が入った酸味のあるスープに淡水魚を煮込んだ鍋料理があります。

 

中国では、一昔前は涮羊肉にせよ火鍋にせよ皆で一つの鍋をつついて食べていましたが、最近では一人一人の小さな鍋に、個々人の好みに合わせて鍋の基礎となるスープを選べる店が増えてきました。基礎となるスープを「鍋底(Guodi)」といいます。食材を食べる際の漬け汁は、基本的には胡麻ダレですが、最近は魚醤などを使う人も増えてきました。胡麻ダレにネギやパクチー、ニンニクや胡麻油、肉みそ、発酵させた豆腐などを加えて好みの味付けにして、湯通しした食材を食べるのです。

 

これほど各地で大きな発展を遂げた鍋料理ですが、中国で鍋料理が何時頃から食べられるようになったのか、その起源ははっきりと分かってはいません。推測の域は出ませんが、恐らく3000年ほど前の「鼎」という食器の発明によって鍋料理が可能になったのではないかといわれています。これは鉄製の大鍋で、3本ないしは4本の足で支えられ、当時は祭祀の時に牛や羊、豚の肉をその中で煮て神に捧げた後、皆で分け合って食べていたものと思われます。これが鍋料理の原型ではなかったのかというわけです。その後、陶器や磁器による鍋が発明され、鍋料理のバリエーションが広がったいったのでしょう。

 

江戸を学ぶとともに、文化の師匠となった中国の歴史を学ぶのもまた一興です。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年12月 1日 09:33に書いたブログ記事です。

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