東藝術倶楽部瓦版 20170221 :科学的か迷信か?-暦注その5「選日」前篇

 

おはようございます。昨日の暖かさから一転し、今朝の東京は冷え込んでいます。今週もまた日によって寒暖の差が大きいとのことなので、体調の管理には十分注意してください。

 

さて、本日もまた暦注についてです。本日は「選日(せんじつ)」についてご紹介したいと思います。

選日とは、吉凶に関わる暦の上の特殊な日とでも言えるでしょうか。その多くは十干十二支によって、その日の吉凶判断を行うもので、そのうちのいくつかは、名前程度なら耳にしたことがあるかと思います。

 

1.三隣亡(さんりんぼう)

江戸時代には「三輪宝」と書かれて、建築には大吉とされていたようですが、いつの頃かは分かりませんが、逆に今では凶日とされています。この日に建築、特に普請棟上げ、柱立て、土起こし、移転などを行うと、火災を起こして向こう三軒両隣(三隣)まで及ぶ(亡ぶ)とまで言われます。この三隣亡の慣習は江戸時代から始まったようですが、その起源はよく分かっていません。日取りは十二節気を元にした節切りによる節月と特定の日の十二支の組み合わせから求めることができます。

1月・4月・7月・10月:亥の日

2月・5月・8月・11月:寅の日

3月・6月・9月・12月:午の日

 

2.不成就日(ふじょうじゅうび)

別名「不浄日」とも呼ばれ、何事を始めるにも不適で、一切の事が成立しない日とされています。この不成就日は、宣明暦時代に会津暦に記載されていただけで、貞享暦にも記載が見られません。ただ、幕府の許可なく頒暦された民間の暦にはこの時代から記載されていたようです。日取りは旧暦の月切りで、以下の通りです。

1月・7月:3、111927

2月・8月:2、101826

3月・9月:1、9、1725

4月・10月:4、122028

5月・11月:5、132129

6月・12月:6、142230

 

3.八専(はっせん)

八専とは、「十干十二支(六十干支)」で、「壬子」の日から「癸亥」までの十二日間のうち、天干と地支が同じ五行の気に属する日(専一の気)が八日あることから、そう呼ばれるものです。十二日間のうち、気が異なる「癸丑」、「丙辰」、「戌午」、「壬戌」の4日を「間日(まび)」と言います(八専八日に間日四日)。と言っても、「十干十二支」を知らないと理解できないかと思いますので、これについてはまた日を改めて解説したいと思います。

第1日:壬子 水水 炎魔天歓喜会

第2日:癸丑 水土 (間日)

第3日:甲寅 木木 地天歓喜会

第4日:乙卯 木木 水天般若会

第5日:丙辰 火土 (間日)

第6日:丁巳 火火 火天諸天会

第7日:戊午 土火 (間日)

第8日:己未 土土 羅刹天下動会

第9日:庚申 金金 風天歓喜仁王会

10日:辛酉 金金 吉祥天豊楽会

11日:壬戌 水土 (間日)

12日:癸亥 水水 多聞天成仏会

この八専は1年に6回めぐってくることになります。この間は降雨が多く、天気予報や農作の吉凶に用いられ、八専第2日目を「八専次郎」と呼び、この日に雨が降れば霧雨になると言われ、農家の厄日の一つとされています。

また、「照り入り八専、降り八専」、「降り入り八専、照り八専」という諺がありますが、初日(八専太郎)が晴れならば、その八専中は雨が多し、入り日が雨であれば、その八専中は晴れが多いとされ、そこから家の修道、旅立ち、婚礼などの日取りを決めたとのことです。

古代中国の「淮南子」では「専を以てえとに従えばすなわち功あり」とされ、すべてのことに吉とされていましたが、後に八専の日は、五行の同性同気は似た者同志が重なって偏ることから、吉はより吉(大吉)となり凶はより凶(大凶)となり、間日には何をしても構わないという見方に変わりました。しかし、何時の頃からかは分かりませんが、凶意だけが強調されるようになり、仏事、供養(法事)、造作、嫁とりなどに悪く、また何事も思うように進まない凶日となってしまいました。

 

4.十方暮れ(じゅっほうくれ)

十干十二支(六十干支)の相剋が続く日の多い期間をいい、「何事もなすにもよくない日」の凶日とされています。「八専」が同性同気であるのに対し、相剋、逆相剋の関係にあるとして、その凶意は甚だ強いとされます。「甲申(甲子から数えて21番目)」の日から「突巳(甲子から数えて30番目)」の日までの十日間を言い、この期間は天地の気が相剋して和合せず、暗雲立ちこめてはいるが雨の降らない「空一面曇天」という、十方の気が塞がって通じない厄日であるとしています。事を起こしても失敗や損失を招くので、極力静かに過ごすべしといい、婚姻・旅行も慎むほうがよいとしています。

第1日:甲申 木金 金剋木

第2日:乙酉 木金 金剋木

第3日:丙戌 火土 火生土(相生) 間日

第4日:丁亥 火水 水剋火

第5日:戊子 土水 土剋水

第6日:乙丑 土土 (比和) 間日

第7日:庚寅 金木 金剋木

第8日:辛卯 金木 金剋木

第9日:壬辰 水土 土剋水

10日:癸巳 水火 水剋火

 

後篇に続く

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年2月21日 14:58に書いたブログ記事です。

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