東藝術倶楽部瓦版 20170614 :「きさらぎの望月のころ」-涅槃会

 

おはようございます。東京は今日も朝から雨、正に傘が手放せない梅雨真っ只中といったところです。今日も外出の予定があるのですが、何となく億劫になってしまいます。

 

さて、本日のテーマは「涅槃会(ねはんえ)」です。

「願わくば花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ」(『新古今和歌集』)は、桜をこよなく愛した西行法師が詠んだ歌ですが、「きさらぎの望月」というのは旧暦2月15日、今では3月末ころのちょうど桜の咲く季節です。この旧暦2月15日は、仏教寺院では釈迦が涅槃に入った日として、毎年「涅槃会」という法要が営まれています。まあ、実際に釈迦の入滅が何月何日だったかということは、今となっては誰も知る由のないことですが、南伝仏教では「ヴァイシャーカ」の満月の日(ウェーサーカ祭)、すなわちインド暦の第二の月の満月の日に釈迦が入滅したとされていることから、中国で旧暦2月15日と定められたとしたとのことです。

 

この涅槃会は、釈迦の誕生日とされる「降誕会〔こうたんえ、『灌仏会(かんぶつえ)』とも呼ばれる〕」(4月8日)、釈迦が悟りを開いたとされる「成道会(じょうどうえ)」(12月8日)とともに「三仏忌(さんぶつき)」または「三仏会(さんぶつえ)」と呼ばれています。涅槃会の日に各寺院では、涅槃図を掲げ「遺道経」を読誦して釈迦の遺徳を追慕奉賛するわけですが...。この行事が日本に伝わったのは推古天皇の時代、奈良の元興寺で行われたのが最初(貞観2年:860年)だと言われています。

 

旧暦2月15日頃は、穏やかな西風が吹くことから、その風を「涅槃西風(ねはんにし)」などと呼ばれます。季節的にはとても過ごしやすい時期です。江戸時代には、こうした爽やかな風を受けながら、寺院で行われる涅槃会の読誦の声が聞こえていたのかもしれません。

 

高見澤