東藝術倶楽部瓦版 20170628 :桃の酒と白酒-桃の膳

 

おはようございます。今朝の東京は曇り、時々雨がぱらついていますが、出勤時には傘をささずに職場にたどり着くことができました。天気予報では今週は雨日和が続き、来週は天気が回復して暑くなる日が多くなるとか。

 

さて、本日も引き続き「上巳の節句」に関連した話題で、「雛の膳(ひなのぜん)」について紹介していきたいと思います。雛の膳というのは、その字が示す通り、雛祭りに際し、雛壇などに供えられる祝い膳のことです。すでに紹介した通り、雛祭り自体が一種の「祓い」の行事であったことから、雛壇に供えられる雛の膳にも何らかの意味があることが容易に想像できます。

 

この雛の膳に欠かせないのが「桃の酒」と「白酒(しろざけ)」です。桃の酒は桃の花を浸した酒で、上巳の節句に飲めば百病を除くと言われています。桃そのものは古代中国では邪気を祓う仙北とされていたことから桃の酒を飲む習慣ができたと言われ、その考えが日本にも伝わり、魔除けとして桃の木を用いることが多く、神符なども「桃符」と呼ばれることもあるくらいです。桃の葉は、汗疹やただれに効き目があり、「桃湯(ももゆ)」あるいは「桃葉湯(とうようとう)」と呼ばれるように、浴湯に入れることもあります。また、葉の汁を飲むと魚の中毒を緩和するとして、昔から用いられてきています。

 

江戸時代(一説には室町時代)になると、桃の酒に加えて白酒が添えられるようになります。この白酒は中国の「白酒(Bai jiu)」とは全く異なるもので、味醂に蒸した米や麹を混ぜ合わせ熟成糖化させた白く濁った酒のことです。甘味が強く、「山川酒(やまかわざけ)」とも呼ばれています。桃の酒の赤に白酒の白と、紅白がめでたいこともあって、両方の酒が供えられるようになったとも考えられます。

 

「菱餅」も雛壇には欠かすことのできないお供えものです。菱餅は、伸し餅を菱型に切ったもので、ふつうは紅白緑の三層をなしています。この三色にも意味があり、赤の着色に使う山梔子(くちなし)が解毒剤、白の菱が血圧低下剤、緑の着色に使う蓬(よもぎ)が造血剤となっています。また、菱餅の形は心臓の形を表しているとも言われています。この菱餅は、「雛あられ」とともに、この季節に特に補給しなければならないデンプンが多く含まれており、雛飾りと言う遊び心とともに、季節に合わせた栄養補給の意味が込められているのです。

 

雛壇の前で女の子が集まって会食を楽しむ風景は、かつて日本で旧暦3月頃に行われていた山遊びの風習を伝えたものだとの説もあります。昔は山や川で穢れを祓った後、蓬などを採って食事を作り、膳を供していたようです。

 

ちなみに雛の膳に関連して、七段飾りの四段目、随身の真ん中に飾られるのが「掛盤膳(かけばんぜん)と菱餅です。掛盤膳とは高級なお膳の型で、上の右に平椀(おひら)、下の右に汁椀、中国に腰高〔高坏(たかつき)〕、上の左に壺椀(おつぼ)、下の左に飯椀という置き方をするそうです。掛盤膳に湯桶と飯櫃(めしびつ)がついたものは、両つぎ付と呼ばれます。

 

高見澤