東藝術倶楽部瓦版 20170721 :越後屋に衣さく音や更衣-更衣(ころもがえ)

 

おはようございます。関東もついに梅雨明け、いよいよ夏本番の季節です。ここ都心も相変わらず暑い日が続きます。エアコンの心地よさが身に染みる思いですが、できれば自然の風で涼みたいところです。子供のころ過ごした時の佐久の山野の風が懐かしく思えます。

 

さて、本日のテーマは「更衣(ころもがえ)」です。「更衣」は「こうい」とも読み、天皇の衣更えに奉仕する女官のことも差します。「ころもがえ」は、今では「衣更え」と書き、冬服から夏服への衣更えは6月1日、夏服から冬服への衣替えは10月1日というのが一般的ですが、昔は旧暦4月1日が冬服から夏服への更衣だったようです。とはいえ、最近では5月にはクールビズにするところも少なくないので、時期的には今とあまり変わらなかったのかもしれません。

 

この更衣ですが、昔の中国の宮廷では、旧暦4月1日と10月1日に夏服と冬服を入れ替える習慣がありました。これが平安時代に日本に伝わりました。当時の日本では、まだ季節ごとに衣服を着分ける風習がなかったので、春の温かさを感じる旧暦4月1日になると、「綿貫(わたぬき)」といって、衣服から綿を抜いて、風の冷たさを感じる旧暦10月1日には再び綿を入れて着ていました。日本では、「四月一日」と書いて「わたぬき」と読む姓をもつ人がいるそうですが、その由来はここにあります。

 

これが室町時代から江戸時代にかけて、四季に合わせて衣服を着替える習慣が定着しました。当初は貴族社会だけの習慣で、年に2回、夏装束と冬装束に着替えるだけでしたが、江戸時代になると、武家社会では年4回、それぞれ季節に合わせて着るものが下記の通り制度化されました。

 

旧暦4月1日~5月4日:「袷(あわせ)」という裏地が付いた着物

旧暦5月5日~8月末日:「帷子(かたびら」という裏地無しの単衣仕立ての着物

旧暦9月1日~9月8日:「袷」を再度着用

旧暦9月9日~3月末日:「綿入れ」という表布と裏布の間に綿を入れた着物

 

江戸時代前期の俳諧師・宝井其角(たからいきかく)〔寛文元年(1661年)~宝永4年(1707年)〕の句に、「越後屋に衣(きぬ)さく音や更衣」というのがあります。この句の意味は、「越後屋(今の三越の前身)から絹を裂く音が絶え間なく聞こえてくる、更衣の季節になった」というものですが、庶民の間でも更衣が普通に行われていたようです。

 

高見澤