おはようございます。昨日、中国出張から日本に戻ってきました。中国東北部、吉林省長春と遼寧省大連に行ってきましたが、私が行く少し前は大雨で道路が冠水の状態だったようです。人権擁護の王琳さんからの情報では、大連空港の前の道路が川のようになっていたそうです。一昨日には四川省九寨溝で大きな地震が発生するなど、中国でも自然災害による被害が続いています。地球人類は、この意味をもっと深く考えるべきでしょう。
さて、前回紹介した「端午の節句」の時には、菖蒲湯に入る習慣について若干ふれましたが、今回はその「菖蒲(ショウブ)」について少しお話ししておきたいと思います。
「菖蒲」は、「ショウブ」とも読みますが、「アヤメ」を漢字で書くと、同じく「菖蒲」となります。では、このショウブとアヤメは同じものなのでしょうか? 実は似てはいますが、まったく別の植物なのです。「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」という諺がありますが、この杜若(カキツバタ)も似ていますし、もう一つ
「花菖蒲(ハナショウブ)」というのも似てはいますがショウブ、アヤメ、カキツバタとは違う種類の植物なのです。ただ、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタがアヤメ科アヤメ属の多年草であるのに対し、ショウブはショウブ目ショウブ科ショウブ属に属する多年草で、旧来の分類ではサトイモの仲間とされていました。このショウブ、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタは葉や花が似ていることもあり、混同しやすく、特にアヤメはイリジェニン、イリジン、テクトリジンといった毒成分にによって皮膚炎や嘔吐、下痢、胃腸炎などの症状を引き起こしますのでご注意ください。
ショウブは独特の匂いを発し、また葉の形が刀の計上をしていることから、古来中国ではこの匂いが邪気を祓うと家の軒に吊るしたり、枕の下に敷いて寝たりしていました。また、ショウブの根は「菖蒲根(しょうぶこん)」という漢方薬にもなっています。ただ、苦味芳香性が健胃薬的な効果もあるようですが、副作用が強いことから内服用には使われていません。日本では奈良時代の聖武天皇(701~756年)の頃から使われはじめ、肺炎、発熱、ひきつけ、創傷などの治療として根を煎じたりおろしたりして使われていたようで、打ち身には根を摩り下ろして患部に摺り込んだり、歯痛には薄荷やうどん粉に混ぜて貼ったりしています。
また、ショウブの葉や根をお風呂の湯に入れて沸かす菖蒲湯には、腰痛や神経痛、リウマチなどに効果があるとされ、匂いが強いことからアロマセラピーの役割も果たします。日本の戦国時代には、宮廷では菖蒲湯の習慣があったようですが、一般に庶民が菖蒲湯を楽しむようになったのは江戸時代になってからのことです。「銭湯を沼になしたる菖蒲(あやめ)かな」(宝井其角)という句にもあるように、端午の節句には銭湯が菖蒲の葉で埋め尽くされている様子がうかがえ、長屋住まいの庶民も湯屋に行って菖蒲湯を楽しんでいたことが分かります。
端午の時期に、ショウブの葉を使って子供たちがチャンバラをする「菖蒲切り」、ショウブの葉を束ねて地面を叩き音の大きさを競う「菖蒲打ち」といった遊びが流行ったのも江戸時代です。特に盛んだったのは享保年間(1716~1735年)頃までで、それ以降は次第に行われなくなっていったようです。
高見澤