東藝術倶楽部瓦版 20170814:目には青葉山郭公初松魚

 

おはようございます。今朝の東京は曇り、時々小雨がパラパラといった情況でしょうか。先週の雨で少し暑さが和らいだ感じもしましたが、昨日は暑さが戻りました。お盆休みで休暇の方もいるかと思いますが、当方は夏休みも満足に取れず、土日出張で生じた代休も消化できない状態です。

 

さて、本日のテーマですが、「皐月」にちなんで「初鰹」といきましょう。

「目には青葉山郭公(ほととぎす)初松魚(はつがつお)」〔『江戸新道』延宝6年(1678年)〕。

 

江戸時代の俳人・山口素堂〔寛永19年(1642年)~享保元年(1716年)〕の句です。この句にある「青葉」、「郭公」、「初松魚(初鰹)」の季語はいずれも夏で、「目には」とだけして、「青葉」を表し、その次の「耳には」を省略して「郭公」を、そして「口には」も同様に省略して「初松魚」を表して、初夏を代表する3つの風物を限られた字数の中に調子よく詠み込まれており、当時から人気のあった俳句です。

 

初鰹が珍重されたのは近世になってからで、とりわけ江戸では高価なハシリの鰹を、女房を質に入れても買い求めるのが江戸っ子の粋とされていました。鰹は、スズキ目サバ科に属する熱帯産の回遊魚で、春から初夏にかけて黒潮に乗って太平洋沿岸を北上し、青葉若葉が生い茂り、ホトトギスが鳴くころに、伊豆半島や房総半島沖が格好の漁場となっています。竿による一本釣りで釣られた鰹は、その日のうちに飛脚によって江戸に届けられたというのですから、それは高値になるのは当然のことでしょう。

 

鰹の旬としては、初鰹以外に年にもう1回あります。秋の水温の低下に伴い、三陸沖の海から関東以南へ南下してくる鰹があります。これが「戻り鰹」と言われるもので、エサをたっぷり食べて脂がのっているのはこの戻り鰹の方です。初鰹は比較的さっぱりしているのが特徴で、旬のハシリとして代表されるのはやはり初鰹の方でしょう。

 

それほどまでにして初鰹が有難がられたのは、当時から初物は縁起が良いとされていたからです。初物は、実りの時期に初めて収穫された農作物であり、旬を迎え初めて獲れた魚介類などのことです。初物には、他にはない生気がみなぎっており、食べれば新たな生命力を得られると考えられていました。

 

初物七十五日(初物を食べると寿命が75日延びる)

初物は東を向いて笑いながら食べると福を呼ぶ

八十八夜に摘んだ新茶を飲むと無病息災で長生きできる

 

そして、初鰹も同様に「初鰹を食べると長生きできる」とされていました。江戸の初鰹は鎌倉あたりの漁場から供給されたため、松尾芭蕉(16441694年)は「鎌倉を生きて出でけむ初鰹」と詠んでいます。

 

尚、勝浦という町が、徳島県、和歌山県、千葉県にありますが、その地名は「鰹浦(かつおうら)」に由来すると言われています。今でも鰹の水揚げの大半を占めるのは、千葉県の勝浦漁港です。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年8月14日 09:30に書いたブログ記事です。

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