東藝術倶楽部瓦版 20170829:紫陽花や帷子時の薄浅黄ーアジサイ

 

おはようございます。先ほど、北朝鮮からミサイルが発射され、日本の上空を通過したとのことです。これから、ますますおかしなことが起こるような気がします。危機にどう対処するか、日頃からの心構えが重要です。

 

個人的なことですが、先週23日に父が永眠し、一昨日葬儀を終え、昨日東京に戻ってきました。しばらく、メルマガもお休みさせていただきました。本日から、再開致します。

 

さて、6月の花といえば、やはり「アジサイ(紫陽花)」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。雨の降る中、色鮮やかに咲くアジサイは、今では多くの人に親しまれていますが、昔はあまり人気のある花ではなかったようです。

 

アジサイはアジサイ科アジサイ属の落葉低木の一つで、日本原産の植物です。原種は日本に自生している「ガクアジサイ」で、海岸沿いに自生しているので「ハマアジサイ」とも呼ばれています。日本で最も古い記録は奈良時代とのことで、『万葉集』にもアジサイの花が詠まれています。

 

「言(こと)問はぬ 木すら味狭藍(あじさい)諸弟(もろと)らが練(ねり)の村戸(むらと)に あざむかえけり」

 

「安治佐為(あじさい)の 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子(せこ) 見つつ思はむ(しのはむ)」

 

上の2首の和歌を見ても分かるように、『万葉集』が編纂された時代にはアジサイを「紫陽花」とは表記していませんでした。「紫陽花」が使われるようになったのは平安時代のことです。平安時代中期の学者・歌人である源順(みなもとのしたごう)〔延喜11年(911年)~永観元年(983年)〕が中国の白楽天の詩を詠んだ際に、その詩に記されていた「紫陽花」を、日本のアジサイと同じものと考え(実際は別のの植物だったとのことですが...)、これがきっかけとなって「紫陽花」の漢字が使われるようになりました。中国では、今では「紫陽花」と表記しますが、本来は「八仙花」と表記しています。

 

アジサイの花言葉は「移り気、浮気」です。ネガティブなイメージですが、これはアジサイが土壌の性質によって花色が微妙に変化することから「七変化」とも呼ばれるからで、一般的には酸性土壌では青い花を、アルカリ土壌では赤い花をそれぞれ咲かせるようです。日本の土壌は弱酸性ですから青色として親しまれていますが、アルカリ土壌の欧州では赤くなってしまいます。

 

「紫陽花や帷子時(かたびらどき)の薄浅黄(うすあさぎ)」

(アジサイの花が咲いて、帷子を着る季節がやってきた。アジサイの色はその薄浅黄の帷子色をしている。)

 

お馴染みの松尾芭蕉の句です。江戸時代には、世界にも誇れる園芸文化が根付いており、今では見られない数々の品種が開発されていたようです。しかし、アジサイの人気はいまいち、というか植木屋には嫌われ気味の存在でした。その理由は、アジサイは繁殖が容易な花で、折った茎を土に植えておくだけで株がどんどん増やせるからです。誰でも簡単に増やせる花ならば、植木屋としては商売にはなりませんね。とはいえ、一般には親しまれていたようで、芭蕉など俳句にも詠まれ、また葛飾北斎も「あじさいに燕」という絵を描いています。

 

文政6年(1823年)にオランダ商館の医師として来日したドイツ人のシーボルトは、日本滞在中にお滝という女性と恋仲になります。彼は自分の好きな花であるアジサイに、お滝にちなんで「Hydrangea otaksa(ハイドランゲア・オタクサ)」という名前を付けようとしましたが、アジサイにはすでに別の学術名「Hydrangea macrophylla」があり、認められることはありませんでした。

 

1828年、シーボルトが帰国する際に、彼の所持品の中から国禁の日本地図(伊能図)が発見されます。幕府天文方・書物奉行の高橋景保(たかはしかげやす)が洋書と交換にシーボルトに渡したもので、景保ほか十数名が捕えられ、景保は獄死、シーボルトは国外追放の上、再渡航禁止の処分を受けました。世に言う「シーボルト事件」です。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年8月29日 12:25に書いたブログ記事です。

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