おはようございます。明け方パラついていた雨もすっかり上がり、雲の間から太陽が顔を出している今朝の都心です。
さて、前回は観世音菩薩の縁日である「四万六千日」について紹介したので、そのついでに本日は「縁日」について少し詳細に解説しておきたいと思います。
一般に神社仏閣のお祭りなどで、よく「縁日」という言葉が使われていますが、この縁日とは、神仏とこの世との有縁(うえん)の日ということで、「会日(えにち)」とも言われています。神仏の降誕や示現(じげん)、誓願、社堂(やしろどう)創建等の所縁のある日を選んで、祭典や供養が行われる日です。「縁」については、「結縁」、「有縁」、「因縁」といったことであることは前回紹介した通りです。つまり、四万六千日のように、その日に関係する神仏を参拝して念じれば、普段に勝るご加護を得られると一般に信じられているもので、市販の運勢暦などにも記載されています。とはいえ、これもまた他力本願的なご利益信仰に騙されて、自助努力を忘れないよう注意が必要かと思います。
この縁日については、すでに平安時代の頃からあったようです。『今昔物語』〔天永~保安年間(1110~1124年)頃成立〕には、「今日は十八日、観音の御縁日也(なり)」とあり、また、『古今著聞集(こきんちょもんじゅう)』〔建長6年(1254年)頃成立、後年増補〕には「十五日、十八日は阿弥陀、観音の縁日」とあります。前回のメルマガでも紹介した通り、特定の神仏が特定の日に信者が祈願すれば、その日に示現して参詣者を救うというご利益信仰が広く信じられていたことが分かります。寺院では、秘仏とされる本尊をその日だけ公開して開帳を行う例も少なくありません。
縁日は、本来は恒例的に行われていた「仏会(ぶつえ)の日」であり、元々は年1回であったものが参詣者の増加とともに月ごとに行われるようになったものもあります。具体的日にちは神仏の縁起伝説、忌み日、十二支や六十干支などに関連して設定されていますが、正直なところその根拠には意味不明なところが少なくありません。寺院からすれば、縁日を縁としてたくさんの参詣者が訪れてくれることが、寺院の存続につながると考えているのかもしれません。
毎月定例となっている縁日には以下のものがあります。
2日、15日、28日 不動
5日 水天宮
8日、12日 薬師
8日、15日、28日 鬼子母神
10日 金毘羅
13日 虚空蔵
16日 閻魔
18日 観音
21日 弘法大師
24日 地蔵
25日 天満宮(天神)
この他にも、亥(い)の刻は摩利支天、甲子(きのえね)の日は大黒天、寅(とら)の日は毘沙門天、己巳(つちのとみ)の日は弁財天、午(うま)の日は稲荷などの定例の縁日もあります。
関東では一般に縁日はその当日ですが、関西ではその前夜を縁日とよぶ習慣があるすです。いずれにせよ、今では、縁日には寺院の境内やそこに通ずる通りに様々な市や夜店が立ち並び、縁日そのものが庶民の憩いの場になっています。
高見澤