おはようございます。今朝の東京は少し冷え込んだ感じがします。すっかり秋の様相を呈しています。日ごとに寒さが増すことでしょう。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」
お馴染み『古今和歌集』に載せられている藤原敏行〔??~延喜7年(907年)又は延喜元年(901年)〕の秋立つ日に詠んだとされる名歌です。この歌にある「おどろく」は「ハッと気付く」という意味で、「秋が来たとははっきりと目に見えてはいないけれども、風の音でハッと気が付いた」という解釈になります。
ということでは、本日は「秋立つ日」、すなわち「立秋」をテーマに紹介していきたいと思います。立秋は本メルマガでもすっかりとお馴染みになった二十四節気の一つで旧暦7月の節気、定気法でいうと太陽黄経135度の時で、新暦では8月7日頃です。この時期、日本では立秋とは名ばかりで、気温はますます上昇し、夏真っ盛りといった季節ですね。ちなみに2017年は8月7日が立秋でした。
立秋が秋らしくないのは、旧暦と新暦のズレによるものと思っている人が少なくないと思いますが、それは誤解です。暦の日付は改暦によってズレても、二十四節気はずらすことができません。旧暦の時代も立秋は暑かったことに変わりはありません。もっとも二十四節気が生まれた中国の中原地帯は、大陸性気候のため、この時期を境に気温が下がり始めるようですが、北京や上海など中原から離れた地域では、日本と同じように猛暑が続く季節です。
季節の一つの区切りとして位置付けられる立秋ですが、この立秋を過ぎた暑さのことを「残暑」と呼んでいます。これに対し、暦の上では(実情は別として)、1年で最も暑い時期のことを「暑中」と呼び、夏の土用の約18日の期間を指します。時候の挨拶を「暑中見舞い」とするか「残暑見舞い」とするかの境目となるのがこの立秋であることを覚えておくと、恥をかかなくてすむことになります。
「秋立つや何に驚く陰陽師」
江戸時代の俳人、与謝蕪村〔享保元年(1716年)~天明3年(1784年)〕の句ですが、先の藤原敏行の歌と併せてこの句を解釈してみると、「文化人である藤原敏行は、風の音で秋の到来にハッと気付いたのだが、天文・暦数の専門家たる陰陽師は何によって気付かされるのだろう」、という一種の洒落を感じることができます。そんな余裕を、我々も日々の生活の中に持ちたいものです。
高見澤