東藝術倶楽部瓦版 20171107:陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也ー「寒露」

 

おはようございます。今朝の東京都心は晴れ、大分秋らしくなってきましたが、それでもまだ冷え込むような寒さには至っていません。仕事の方も忙しく、ここ最近は経済界の重鎮と会う機会が増え、何かと緊張する日々が続いています。そんな中で、江戸の文化を調べることは、私にとって一つの息抜きなのかもしれません。

 

さて本日は、二十四節気の一つ「寒露(かんろ)」について紹介してみたいと思います。以前、二十四節気のところでも少し触れましたが、寒露は9月の「節気」、平気法でいうなら太陽黄経195度の時を指します。また、この時点から次の9月の「中気」である「霜降(そうこう)」までの期間を指すこともあります。新暦では10月8日頃にあたります。

 

秋の二十四節気は、7月の節気である「立秋」から始まり、同月中気の「処暑(しょしょ)」、8月節気の「白露(はくろ)」、同月中気の「秋分」、9月節気の「寒露」、同月中気の「霜降」までで、そして10月中気の「立冬」から暦の上での冬が始まります。寒露の時期は、長雨が終わり大気の状態が安定します。よく晴れた夜には放射冷却によって大地が冷え、風のない日には地表付近の水蒸気が凝結して、草木の葉などに露を結ぶ光景を見ることができます。新暦9月8日頃の白露の候よりも、明け方の気温が下がり、露が冷たさを増すことから寒露と言われます。次の霜降、つまり霜が降りる寸前の露ということができます。

 

秋の深まりを感じさせる寒露の時期は、五穀の収穫がたけなわで、農家はことのほか繁忙を極めています。また、山野には晩秋の色彩が色濃く、はぜの木の紅葉が美しくなります。朝晩はそぞろ寒気を感じ始め、雁などの冬鳥が渡ってきます。菊が咲き始め、コオロギが鳴き止む季節です。この頃は秋の味覚を楽しむには絶好の時期と言えます。柿や栗、各種キノコ類などの山の幸のほか、柳葉魚(ししゃも)や鯖(さば)など海の幸も豊かな季節です。

 

「陰寒の気に合って、露むすび凝らんとすれば也」

この一文は、天明7年(1787年)に江戸で出版された『暦便覧』〔太玄斎(たいげんさい)著〕に記された寒露を説明したものです。

中国の陰陽五行説からすると、秋は「金」の属性をもつ「金気」として捉えられます。つまり金属の性質を持った季節とされているのです。金属の有する「堅い」という性質では、栗やドングリ等の木の実、或いは稲や大豆等の穀物等堅い殻を連想することができます。また、金属が水を生み出す性質(冷たい金属の表面には露がつきやすい)があるという点では、五行の金気の相生説、すなわち「金生水(金より水を生ず」となり、やがて次の「水気」である冬が到来すると説明することができます。

 

こうした陰陽五行説での説明からすると、白露や寒露のように、秋の節気に「露」の字が使われる理由がよく分かるような気がします。「露も...」、「露ほども...」という古語は、「少しも...ない」という否定の意味をもつ言葉としてよく使われます。また、はかない人生や生命を、日が昇るにつれ消え去る露に例えて、「露の身」、「露の命」などとも表現します。この時期、早朝の野を歩くと、ツユクサ(露草)の鮮やかな藍色が眩しく感じられます。ツユクサの花汁は衣服の染料としても用いられますが、色があせやすいことから露の名前があてられたと言われています。

 

高見澤