東藝術倶楽部瓦版 20171113:豪華絢爛匠の技により八幡神の降臨を仰ぐー「秋の高山祭」

 

おはようございます。今朝の東京は晴れですが、朝から冷たい風が吹いています。まだ薄手のジャンバーで過ごせますが、もうそろそろ厚手のコートやジャンバーの準備をしておく必要があります。

 

さて、本日は「日本三大美祭」のうちの一つである「秋の高山祭」について紹介したいと思います。日本三大祭とは、以前にも紹介した「京都祇園祭」、「秩父夜祭」及び「高山祭」のことを指します。これに「長浜曳山祭」を加えて「日本四大美祭」と呼ぶこともあります。

 

この高山祭は岐阜県高山市で行われている行事で、「春の高山祭」と呼ばれる4月1415日に行われる日枝神社の「山王祭」と、「秋の高山祭」と呼ばれる10月9、10日の桜山八幡宮の「八幡祭」があります。山王祭は高山南半分の氏神の祭り、八幡祭は高山北半分の氏神の祭りとなっています。本日は、特に「秋の高山祭」についてお話ししたいと思います。

 

この高山祭の起源は、戦国大名・金森長近(かなもりながちか)〔大栄4年(1524年)~慶長13年(1608年)〕が飛騨を治めた天正13年(1585年)から金森頼時(かなもりよりとき)〔寛文9年(1669年)~元文元年(1736年)〕が出羽国上山藩に移封となった元禄5年(1692年)までの時代まで遡ります。そして、この祭りの最大の見物である「屋台(祭用の山車)」のある祭りとなったのが、享保3年(1718年)頃からだとの記録が残っています。

 

当初は殿様のための神事として行われていたようです。飛騨高山の地域は山間にある小さな集落で、作物が育ちにくく、年貢として収める穀物等の物資を十分得ることができなかったため、土木や建築などを行う「雑徭(ぞうよう)」と呼ばれる役務で税を納めていました。そうした中で磨かれていった優れた建設や土木の技術が、屋台に施された数々の装飾に活かされるようになります。屋台の形態や構造が整って、豪華絢爛になったのが文化文政時代(18041830年)といわれています。

 

社会生活の単位でもあった「屋台組」が自分たちの組の屋台を宝として、強固な団結の下に祭礼、修理、保存を担ってきています。改修の度に、他の組の屋台に負けじと匠の技術の競い合いが行われてきました。特に幕末になると、「旦那衆(だんなしゅう)」と呼ばれる豪商が中心となって屋台の回収におカネを出すようになり、屋台造りの工匠たちの技を競い合わせました。現在、これら屋台は国の重要有形民俗文化財に指定されており、修理工程は江戸時代と同じように行われています。

 

4月の山王祭には12基の屋台、10月の八幡祭には11基の屋台が街中を曳き回されます。「宮本」、「年行司」と呼ばれる役の指揮による華やかな屋台の曳行、そして屋台で上演されるからくり人形や囃子などの見せ物は、屋台を用いた代表的な祭礼行事になっています。

 

江戸時代、八幡祭は旧暦8月1日の「八朔」の日が祭礼でした。今でも八朔に氏子から選ばれた祭礼を仕切る「年行司」が宮司から依頼を受け、例祭準備を始める「祭事始祭」が行われています。山王祭は旧暦3月15日の満月の祭礼、八幡祭は旧暦8月1日で真っ暗な新月の祭礼として位置付けられていました。

 

高山祭の屋台の起源は、京都八坂神社の祭礼である「祇園祭」です。飛騨高山のような山間では、日照りや長雨、イナゴなどの虫害、さらには疫病や天変地異などの災難は、すべて厄災神の仕業とされてきました。屋台では、そこの飾られるきらびやかな飾りを施す「風流化現象」によって非日常を演出します。茶道や華道など質素で無駄を排除した「詫び寂び」による風流もあれば、華美で派手な演出もまた風流という認識に至ります。つまり、日常でないものが風流であり、神々が降臨する場所でもあったわけです。豪華絢爛な屋台を造ることで、力強い八幡神の降臨を仰ぎ、その霊威を授かった屋台を曳き回すことで、この地位から厄災を除き、人々の健康と五穀豊穣を祈ったというわけです。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年11月13日 09:12に書いたブログ記事です。

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