東藝術倶楽部瓦版 20180129:人の人生は着帯祝いから始まるー「安産祈願」

 

おはようございます。先週は水曜日から北京に出張しており、一昨日の土曜日の夕方の便で帰国しました。お知らせもせず、瓦版をお休みしてしまい、失礼しました。明日、明後日と午前中に立ち寄りがあり、直接事務所には来ませんので、瓦版もお休みさせていただきます。

 

さて、本日のテーマは「人生儀礼」の中でも、まず生まれる前に行われる「安産祈願」について紹介していきたいと思います。安産祈願は、「着帯祝い」とも呼ばれ、妊娠5カ月目(1619週目頃)の「戌の日」に、安産を祈って腹帯を神前に供え祈祷を受ける儀式のことです。この日から妊婦は腹帯を巻き始めることになります。

 

戌の日に行うのは、犬はお産が軽く、多産であることにあやかる意味があります。戌の日に腹帯を締め、赤ちゃんの健やかな成長と無事な出産を願って安産祈願を受けるというわけです。お腹に巻くこの腹帯のことを「岩田帯(いわたおび)」と言います。岩田帯の語源は、穢れや災いから身を守る「斎肌(いはだ)帯」からきていると言われ、岩のような頑丈で強い子供になるという願いが込められています。また、結んだ帯を肌に着けた「結肌(ゆいはだ)帯」が語源だという説もあります。

 

この安産祈願の歴史は古く、『古事記』には、神功皇后が三韓征伐に赴いた際に懐妊中であったために、途中で産気づくことがないよう、また帰国して無事出産できるようにとの願いから腹帯を巻いたと記されていて、これが腹帯を巻く始まりと考えられています。平安時代にはすでに宗教儀式となっていました。皇室では8世紀奈良時代にはすでに記録が見られ、現在でも「着帯の儀」の名称で行われていて、5カ月目の戌の日の「内着帯」と9カ月目の戌の日の正式な「着帯の儀」からなります。

 

一般庶民にこの着帯が広がったのは江戸時代で、その頃までは今のような妊娠検査もなく、妊娠を知らずに流産してしまうことも少なくなかったようです。そのため、江戸時代の庶民は胎児が着帯するまでに無事育ったことを大いに喜んだのです。妊婦の家では着帯の日に赤飯を炊いて近所の村人を集め、お腹の子供を村落の一員として認めてもらい、村の有力者や本家の家長、妊婦の実家などから帯が贈られました。江戸時代には、一人の人の人生はこの安産祈願、着帯祝いから始まっていたのです。

 

高見澤

 

2021年1月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

このブログ記事について

このページは、東藝術倶楽部広報が2018年1月29日 10:37に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「東藝術倶楽部瓦版 20180123:人生の節目を感謝し祝う「人生儀礼」」です。

次のブログ記事は「東藝術倶楽部瓦版 20180201:子供の健やかな成長を祝う-「お七夜」」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

カテゴリ

ウェブページ