おはようございます。今朝の東京都心は雨、幸いにも出勤の際には大した風もなく、あまり濡れずに職場に到着することができました。ただ、先ほどから時折強い風が吹いているようで、しばらくしたら更に風が強くなるものと思われます。関東では風速25メートルの風が吹くと予想されています。
さて、3月3日の勉強会に向けて、江戸城の説明も一通り行いましたので、ここで瓦版のテーマも「人生儀礼」に戻りたいと思います。本日のテーマは「初誕生の祝い」です。
古来日本では生まれると1歳、そして正月ごとに1つずつ歳が増えていく「数え年」で年齢を数えていたので、当然誕生日にお祝いをするという習慣はありませんでした。誕生日を祝うようになったのは、やはり欧米の習慣が定着するようになってからだと思われます。
とはいえ、日本でも子供が生まれて1年目の初誕生日だけは特別扱いで、大々的にお祝いをする習慣が各地であったようです。この初誕生の祝いは、昔は「ムカレ」、「ムカイドキ」、「ムカワリ」、「ムコヅキ」などとも言われており、お産婆や親戚を招いてお祝いしていました。衛生状態や医療設備が発達していなかった昔は、今と比べれば1歳を迎える前に亡くなることも多く、1年間無事に成長してきたことへの感謝・喜びと、今後の健やかな成長を願ってお祝いをしていたのでしょう。
誕生日パーティーというと、今ではバースデーケーキでお祝いしますが、古来日本でお祝いをする際には、一般的に「餅」で祝うことが多かったようです。この初誕生の祝いでも、お餅をつくところが多く、そのお餅を「誕生餅」と呼んでいました。このお餅も地域によって様々で、誕生餅のほか、「一生餅」、「踏み餅」、「立ったら餅」、「背負い餅・しょい餅」、「力餅」などと呼ばれています。このお餅には、神様と子供の結びつきを強めようとの願いが込められてもいるそうです。
一生餅というのは「一升餅」とも呼ばれ、一升分(1.8kg)の糯米を使って作る餅のことです。一升と一生を掛け、「一生食べ物に困らないように」、「これからの一生が健やかになるように」との願いが込められています。お餅の形も丸く、「円満な人生」という意味も込められているのかもしれません。
地域によっては、子供が1歳の誕生日前後から早く歩き出すのは、家を離れるので良くないとされ、誕生餅を背負わせた子供をわざと転ばせたり、餅を投げつけて歩かせないようにする風習があります。このため「転ばせ餅・転ばし餅・転び餅」などとも呼ばれます。また、子供に餅を踏ませる踏み餅のある地域もあります。
地方それぞれに風習が異なり、それぞれの起源が何時頃だったのかははっきりしていません。
高見澤