東藝術倶楽部瓦版 20180509:将軍に謁見できない「御家人」

 

おはようございます。東京都心では、昨日から降り続いている雨がときに激しくなっており、また高台では風が強いことから、足元が濡れてしまう状態です。今朝は、四川省長や中国国際貿易促進委員会会長と日本経済界との懇談があり、これからホテルニューオータニに向かうことになっています。李克強総理の訪日に合わせて多くの要人が来ており、ホテルも厳戒態勢となっていることでしょう。

 

さて、本日は「御家人」について紹介していきたいと思います。御家人は、元々平安時代に貴族や武家の棟梁に仕える人たちを「家人」と呼んでいたのを、鎌倉時代以降、鎌倉殿(将軍)と主従関係を結び従者となった人たちを称して「御家人」と呼ぶようになったということです。家人に「御」を付けたのは、鎌倉殿への敬意を表しているとのことです。

 

鎌倉時代において、鎌倉殿と御家人との間は、「御恩」と「奉公」の関係によって結び付けられていたことは、日本史の教科書にも書かれている通りです。御家人が鎌倉殿から受ける御恩には、「安堵」と「新恩給与(しんおんきゅうよ)」があります。安堵には、鎌倉殿から直接所領を安堵される「所領安堵」、在地領主の本宅を安堵する「本宅安堵」があり、これらを合わせて「本領安堵」とも呼んでいます。これに対して新恩給与は、勲功のあった御家人に対し、幕府が新たに所領を与えることを指します。こうした御恩を受ける見返りとして、御家人は鎌倉殿に対して奉公を行うことになります。この奉公には、戦時の従軍参加や平時の京都・鎌倉での大番役・異国警護役などの「軍役」、そして幕府から御家人に賦課された米銭の納入という「公事(くじ)」がありました。この御恩と奉公という主君と御家人との関係は、基本的には江戸時代に通じるものもありますが、江戸時代には、この御家人という立場はかなり明確な存在として位置付けられます。

 

江戸時代の御家人は、知行が1万石未満の徳川将軍家直参の家臣団(直臣)で、そのうち将軍に直接謁見できない御目見未満の家格の家臣を指します。御目見以上の家格の家臣は、前回説明した直参の旗本です。御家人の多くは、戦場においては徒歩の武士、平時には勘定所勤務や普請方勤務、番士、町奉行所の与力・同心といった下級官僚としての職務や警備を務めていました。

 

御家人は、原則として扉のある籠などの乗り物や馬に乗ることはできず、家に玄関を設けることも許されてはいませんでした。例外として、奉行所の与力は馬上が許されることもあったようです。有能な御家人には、本来であれば旗本が就くはずの上位の役職に登用されることもあり、「布衣(ほい)」と呼ばれる制服を着ることができる役職以上の役職に就くか、或いは3代続旗本の役職に就任すれば、旗本の家格になりうる資格が得られたとのことです。

 

御家人には、「譜代」、「二半場(にはんば)」、「抱席(かかえせき)」の3つの家格に分かれていました。家康から4代将軍・家綱の時代に将軍家に与力・同心として仕えた経験のある者の子孫を譜代、それ以降新たに御家人として登用された者を抱席、その中間の家格にあるものを二半場としていました。譜代の中で特に由緒ある御家人は「譜代席」と呼ばれ、江戸城内に自分の席を持つことができたようです。譜代と二半場は、無役であっても幕府から俸禄の支給を受け、家督を惣領に相続させて身分と俸禄を伝えることができました。これに対し抱席は、基本的に「一代限りの奉公」だったようです。とはいえ、時代とともにこの原則は次第に曖昧となり、最終的には裕福な町民や農民が御家人の名目上の養子の身分を金銭で買い取って御家人の身分を得る、といったことも行われていました。

 

御家人の大半は、知行地を持たない30俵以上80俵未満の蔵米取りで占められ、知行地を持つ者でも200石取り程度の小身ではありましたが、家禄の高低は家格の決定に関係なく行われていたようです。江戸中期以降、多くの御家人の生活は非常に窮乏し、内職を公然と行って家計を支えることが一般的でした。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2018年5月 9日 23:07に書いたブログ記事です。

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