東藝術倶楽部瓦版 20180525:将軍近侍の「小姓」、「小納戸」、「奥医師」、「奥儒者」

 

おはようございます。今朝、家を出た時には曇り気味の天気でしたが、職場に到着するころには日差しが差し込み、今日も日中は気温が上がりそうな雰囲気が漂っています。一方、世界に眼を向ければ、6月に予定されていた米朝会談が中止、水面下で何が起きているのか、一般人には知り得ない駆け引きが行われています。

 

さて、前回は側衆ということで、中奥勤めの話をしましたので、本日はそのついでに「小姓(こしょう)」、「小納戸(こなんど)」、「奥医師(おくいし)」、「奥儒者(おくじゅしゃ)」について紹介していきましょう。

 

小姓については、その語源は「扈従(こしょう)」からきているとされ、戦国時代や安土桃山時代において、一般に平時には主君の側にいて秘書の役割を、そして戦時には主君の盾として命を捨てて守る役目を負う若年者のことを指していました。そのため、幅広い知識・教養と一流の作法・武芸を身につけていなければなりませんでした。時には主君の男色の相手をした例もありました。豊臣秀吉や徳川家康は大名家の子弟を小姓という名目で、事実上の人質としてたこともありました。

 

江戸幕府において、いわゆる秘書的な役割は御側御用人、御側御用取次、側衆などが担っていたことは、すでに説明した通りです。では小姓は何をしていのかというと、将軍に近侍しての雑務や日常生活に必要な取次をすることが主な職務となっていましたが、建前上の最大の役目は将軍の殿中における警護でした。小姓には、「表小姓(中奥小姓ともいう)」と「奥小姓」とがあり、いずれも若年寄支配の旗本役、その数は2030人ほどで中奥勤めで、その中に「肝煎役(きもいりやく)」と呼ばれる数人の小姓組頭がいました。小姓が設置されたのは江戸幕府草創期で、役高は500石、家禄1,000石以下の小身は役料300俵でした。将軍に常に近侍することから、その人選は厳しく、人品第一、5代将軍・綱吉のときには1万石以上の者が任じられることもあったようで、中奥で一勢力を成したとも言われています。

 

この小姓の下で日常の細務を行うのが小納戸です。小姓と同じく中奥勤めで、若年寄支配、御目見え以上の者がこの任に当たっていました。小納戸の人数は、4代将軍・家綱のときには20人前後でしたが、幕末には100人超であったといわれています。旗本や譜代大名の子弟から選ばれ、職掌は多岐にわたり、御場掛(ごばがかり、鷹場の管理)、御膳番(ごぜんばん、毒見役・健康管理)、奥之番(おくのばん、大奥への送迎役)、肝煎(きもいり、世話役)、御髪月代(おぐしさかやき、月代・顔剃り・洗顔・歯磨き)、御庭方(おにわかた、庭掃除)、御馬方(おんまかた、江戸市中の火災状況報告役)、御鷹方(おたかかた、鷹匠頭)などがあって各人の性格と特技によって担当が命じられていました。この職が設置されたのは、寛永年間(1624年~1644年)だと言われています。納戸方には、小納戸に対して「大納戸(おおなんど)」という役職があり、「御納戸」とも呼ばれています。将軍の納戸を管理して、衣服や器物の出納をしていました。

 

続いて「奥医師」ですが、これは読んで字の如く江戸幕府の医官です。若年寄支配で、中奥、大奥に住んでいる将軍とその家族の診察を行っていました。「近習医師」、「御近習医師」、「御側医師」などとも呼ばれ、ほとんどが世襲でしたが、中には諸大名の藩医や町医者から登用されることもあったそうです。奥医師には、奥医師の上席である「典薬頭(てんやくのかみ)」、将軍とその家族の診察を行う「奥医師」、殿中で不時の病人や怪我人を診察する「番医師」、平時には登城せず不時の時に備えた「寄合医師」、武士や町人の治療を行う「小普請医師」、小石川養生所に常勤する「養生所医師」などがいました。江戸の医師については、また改めて紹介していきたいと思います。

 

そして最後に「奥儒者」です。奥儒者は、将軍の侍講(じこう)を務めた儒者で、こちらは林羅山〔天正11年(1583年)~明暦3年(1657年)〕を祖とする林家が世襲していました。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2018年5月25日 07:57に書いたブログ記事です。

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