東藝術倶楽部瓦版 20181213:江戸の町はなぜ火事が多かったのか?-「江戸の火事」

 

おはようございます。今朝の東京都心は、また一段と風が冷たく感じます。次の日曜日から火曜日まで、北京出張となりますが、北京はまた一段と冷え込んでいることでしょう。今度のフライトも全日空を利用しますが、北京直行便なのでまずロストバゲージはないと思います。全日空からは、荷物は帰国後に一応出てきたものの、臨時で購入した代金の半分ほどが補償の対象として支払われるようです。本来、買わなくてよかったものまで購入したわけですが、それでも購入したモノは残るので、それで納得するしかないのでしょうか。

 

さて、前回までは江戸の火消について紹介してきましたので、そのついでに本日からは「江戸の火事」について紹介していきたいと思います。そこで、先ずは江戸の火事とその原因について、前置き的に解説してみましょう。

 

以前、火消のところでも紹介しましたが、江戸で発生した火事の回数は、他の都市に比べて圧倒的に多かったという研究成果があります。関ヶ原の戦いの翌年、慶長6年(1601年)から、大政奉還の行われた慶応3年(1867年)までの267年間に、江戸では「大火(たいか)」と呼ばれる大きな火災が49回、大火以外の火災も含めれば何と1,798回もの火事が発生しています。

 

他の都市について大火の発生回数を見てみると、京都が9回、大坂が6回、金沢が3回と、ケタそのものがまったく違います。

 

また、1,798回を数える江戸の火事を時代別にみると、慶長6年から元禄13年(1700年)までの100年間では269回、元禄14年(1701年)から寛政12年(1800年)までの100年間では541回、寛政13年・享和元年(1801年)から慶応3年までの67年間では986回と、時が過ぎるとともに火事の回数が極端に増加していることが分かります。

 

では、なぜこれだけ江戸に火事が多く、時代とともに増えていったのでしょうか? その原因として挙げられるのは、一口に言えば、人口の増加とそれに伴う建物の密集化が進んだからです。江戸の町が作られて以降、江戸で暮らす人が次第に増えていき、人口が100万人に達する世界最大の都市になったことは、皆さんご存知の通りです。人が増えれば、それに伴って都市も拡大するのですが、新たな都市が建設するまでは、町人は窮屈な思いをしながら密集した建物に住まわざるを得なかったのです。

 

元々、江戸時代には電気などありませんので、調理や照明に火を使うことは当たり前のことです。そのため、火の取り扱いや始末の不備による失火で火が燃え上がると、木造家屋、茅葺・藁葺の屋根、紙を使った障子などはあっという間に焼失してしまい、家屋が密集していれば、それだけ被害も広がってしまうというわけです。

 

また、江戸の気候条件も被害が広がる要因の一つになります。日本海から日本に流れ込む北、又は北西の風である冬の季節風は、中央にそびえる山脈によって湿気が遮られ、乾燥した「空っ風」とよばれる強風が江戸に流れ込みます。さらに春から秋にかけては、日本海を通過する低気圧によってフェーン現象が起こり、高温で乾燥した南又は南西の風が吹きます。こうした乾燥した風が、火の燃え広がりを酷くする役目を果たしてしまうのです。

 

もう一つ、「火付(放火)」による火事も少なくなかったようです。「火附」、「火を付候者」、「火賊」などと記され、放火犯の多くは生活に困窮した者でした。享保8年(1723年)から翌享保9年(1724年)までの2年間で捕えられた放火犯は102名で、その中には無宿者など下層民が多く含まれていたと言われています。放火の動機としては、火事騒ぎの紛れて盗みを働く「火事場泥棒」で、恋愛や怨恨など人間関係に起因する放火もあったようです。放火犯に対する処罰は厳しく、見せしめとして、市中引き回しのうえ、火あぶりが原則でした。これについては、また詳細に紹介したいと思います。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2018年12月13日 09:17に書いたブログ記事です。

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