東藝術倶楽部瓦版 20191129:【江戸の川その19】利根川東遷事業で利根川の支流に-「渡良瀬川」

 

おはようございます。11月も明日で終わり、来週は師走に入ります。今年も残すところ1カ月となり、令和2年を迎えることになります。周りを見渡せば、何事においても外見を繕うことばかりに終始し、本質を求めて根本的に問題を解決しようとか、中身を理解して世の中や事業を少しでも良い方向に向かわせようとかといった信念みたいなものは一切感じられません。この先、いったいどのような世の中になっていくのか、不安の種はつきません。

 

さて、本日は「渡良瀬川(わたらせがわ)」について紹介しようと思います。渡良瀬川は利根川水系の一級河川で、栃木県西部から群馬県東部を経て、茨城県と埼玉県の県境を流れて、利根川に注いでいます。その流域面積は2,621平方キロメートルと利根川支流最大で、流路延長は107.6キロメートルと鬼怒川、小貝川に次いで第3位となっています。

 

栃木県日光市にある標高2,144メートルの皇海山(すかいさん)の登録に源を発し、足尾(あしお)山地山麓にある草木ダムを経て西南に巡り、関東平野に出てからは南東へと向きを変え、その後は群馬県と栃木県の県境を東南東へと進みます。栃木県栃木市に設けられた渡良瀬遊水地に入った後は巴波川(うずまがわ)、思川(おもいがわ)を合わせ更に南下し、茨城県古河市と埼玉県加須市(かぞし)の境で利根川に合流します。

 

一般的には、日光市足尾地区の神子内川(みこうちがわ)との合流部から上流は「松木川(まつきがわ)」と呼ばれ、その下流からが渡良瀬川と呼ばれているそうです。渡良瀬川の名称の元となった日光市足尾地区「渡良瀬」の地名は、日光を開山した奈良時代から平安時代初期にかけて活躍した勝道上人(しょうどうしょうにん)が、川を渡ろうとした際に、ちょうど渡ることができる浅瀬があったことからその場所を渡良瀬と名付けたとされています。

 

もともと渡良瀬川は現在の矢場川が本流であり、上野国と下野国の国境となっており、蛇行しながら東へ流れていき、洪積台地である藤岡台地に当たって向きを南側に変えて南下、現在の加須市付近で旧会の川と合流した後は下野国と武蔵国の国境を流れ思川と合流して、下総国葛飾郡を貫流して江戸湾に注いでいました。下流部は現在の江戸川の流路に近く、「太日川(ふといがわ)」と呼ばれていたことは、以前紹介した通りです。江戸時代初期までは、利根川もほぼ平行して流れ、江戸湾に流れ込んでいました。

 

戦国時代後期、矢場川から渡良瀬川の河道を分離する工事が行われ、現在の渡良瀬川がその本流となります。元和7年(1621年)、利根川東遷事業により新たな利根川本流河道として新川通りを開削、利根川が渡良瀬川に接続されると、その後渡良瀬川は利根川の支流となりました。寛文4年(1664年)、矢場川を現在の群馬県館林市木戸から下早川田まで開削して渡良瀬川と合流させます。これにより、上野国と下野国の国境も移動となったようです。

 

江戸時代、渡良瀬川もまた河川舟運が発展し、両岸には河岸が置かれていたほか、サケ漁なども行われていました。また、灌漑なども行われていましたが、関東の他の河川と同様に洪水などの被害にも頻繁に見舞われていたようです。

 

更に渡良瀬川上流には、慶長年間(1596年~1615年)以来開発されてきた足尾銅山があります。足尾銅山は明治以降に大規模な銅の採鉱や精錬が行われ、「日本の公害の原点」と言われるほどの大気汚染、水質汚染が生じました。上流地域一帯は森林が枯死、広い範囲にわたって草木がまったくみられない裸地となりました。

 

こうした洪水対策や鉱毒沈殿による除毒を目的として栃木県谷中地域(栃木市)に設けられたのが渡良瀬遊水地です。現在、面積33平方キロメートル、貯水容量約2億立法メートルの渡良瀬遊水地は、サムサール条約の登録湿地となっており、洪水防止のほか東京、栃木、群馬、茨城、埼玉の各都県に都市用水を供給する役割も果たしています。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2019年11月29日 17:17に書いたブログ記事です。

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