東藝術倶楽部瓦版 20201120:【江戸の町その40】武家の居住地として形成-「山の手」

おはようございます。今後の新型コロナウイルス感染は「神のみぞ知る」と、西村経済再生相が述べたとの報道がなされています。確かに「人事を尽くして天命を待つ」というように、最終的な結果はなるようにしかなりませんが、それはあくまでも「人事を尽くし」た人の姿勢であり、今の日本政府の対応がどこまで「人事を尽くし」たかは、庶民の知るところではありません。これと対照的なのが中国政府の姿勢です。何かが何でも感染症を抑え込むという意気込みで政策を進め、庶民の意向など考慮されないことも少なくありません。結果として、それで良かったと言われることもあります。国情や考え方の違いによって、対応が異なるのは当然ですが、今回の感染症対策と経済対策のバランスの取り方には、最終的に目指すところの目的によって大きく差が出ることでしょう。「神のみぞ知る」などという言葉に、信念が感じられないのは私だけでしょうか?

 

さて、本日からは「山の手(やまのて)」について紹介してきたいと思います。そもそも山の手とは、低地にある下町に対して小高い山側の地域を指す言葉として使われています。山側にある方向を指すことから、山の手と言われています。一般に山の手というと、「山手線」に代表されるように東京の山の手がよく知られていますが、東京以外でも横浜市、大阪市、神戸市などでも「山の手」や「山手」といった地名が存在しています。

 

東京における山の手は、江戸時代前期に江戸城の近隣及び西側の高台に幕臣の居住地や大名屋敷として開発されたのが始まりです。山の手、下町という言葉も17世紀後半には見られており、この頃にはすでに山の手は武家屋敷、下町は町人の居住地という認識が定着していたようです。

 

江戸時代前期の山の手の地域といえば、麹町(千代田区)、四谷(新宿区)、牛込(新宿区)、赤坂(港区)、麻布(港区)、小石川(文京区)、本郷(文京区)などの地域を指していました。武家屋敷のほか神社仏閣も多く、八百八町と言われる町人の居住地は少なかったようです。江戸城防衛のため、江戸城の近辺や主要街道沿いの要地には有力な家臣に屋敷が与えられます。旗本や御家人は番町(千代田区)や駿河台(千代田区)に居住区が設けられ、それが周辺に広がっていきます。下級武士ほど江戸城から離れた場所へと移されていきました。

 

江戸時代中期になると江戸の人口も増加し、遅れて開発された下町の本所などにも武家屋敷が設けられるようになり、次第に武士と町人との住み分けの地域が曖昧となっていきます。その一方で、麹町、麻布、赤坂辺りにも町人の町が広がっていくなど、山の手と言われる地域は複雑な様相を呈するようになりました。

 

山の手と下町の範囲が本格的に広がっていくのは、大正時代以降と言われています。もともとは武蔵野台地の東端部、現在の山手線内の内側が西端となっていた山の手も、「第二山の手」と呼ばれる一帯が形成されていきます。

現在、「都心三区」と呼ばれる千代田区、中央区、港区に加えて新宿区、文京区の二区が加わって「都心五区」となり、更に渋谷区と目黒区が加わって「都心七区」といった呼び名かあります。「東京新聞」は地域版として「都心版」、「山手版」、「したまち版」に分けて発行しているようですが、そのエリア分けは以下の通りです。

都心版:千代田区、中央区、港区、新宿区、品川区、大田区、江東区、渋谷区

山手版:目黒区、世田谷区、中野区、杉並区、豊島区、板橋区、練馬区

したまち版:台東区、墨田区、荒川区、文京区、足立区、葛飾区、江戸川区、北区

 

上記の山の手と下町の区分けをみても分かるように、もともとのイメージと合わせてみても明確な定義はありません。次回以降は、山の手と言われた一つ一つの地域を見ていくことにしましょう。

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このページは、システム管理者が2020年11月20日 08:00に書いたブログ記事です。

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