東藝術倶楽部瓦版 20180119:時間か空間か?ー「平気法」と「定気法」

 

おはようございます。相変わらず寒い日が続きます。私の喉の調子も大分良くなりましたが、まだ完全に治ったわけではありません。今冬の風邪はかなりしつこいので、気をつけてください。私などからすれば、むしろ一気に高熱を出してデドックスしてしまった方が良いのではないかと思うくらいです。

 

さて、暦の話も、長らく年中行事についてお話してきましたが、年中行事はここに紹介したものに限らず、各地方で江戸の昔から伝わる独特の祭祀や風習がたくさん行われています。それぞれに何らかの意味があり、長く続けられてきているものと思いますが、最近では生活スタイルの変化で衰退していくものも少なくありません。また、せっかく伝統を伝えているにもかかわらず、人々の意識の低さによって不祥事が起きている現実も嘆かわしいと思わざるを得ません。今こそ原点に返って、人間の存在というものをもう一度考え直してみる必要があるのではないでしょうか。

 

さて、説教じみた話はこれまでとして、しばらくは暦に関する補足説明をしていきたいと思います。

 

本日のテーマは「平気法(へいきほう)」と「定気法(ていきほう)」です。これは何かというと、旧暦における二十四節気の配置方法で、平気法が節気間の時間を均等に24分割するのに対し、定気法は黄道を24分割して節気を配置するものです。

 

先ず平気法ですが、これは「恒気法(こうきほう)」とも呼ばれ、時間を分けることから「時間分割法」という言い方もされます。冬至から翌年の冬至までの時間(1太陽年、365.2422日)を24等分すると、二十四節気の時間間隔は15.218日となります。基点として冬至を11月に固定し、15.218日ごとの分点に節気と中気を交互に配置し、各月には必ず中気が含まれるようにします。しかし、太陽年による1年と月齢による旧暦12カ月との間に差が生じているので、中気が含まれない月が出てきます。旧暦では、これを「閏月(うるうづき)」としています。

 

これに対して定気法というのは、太陽の天球上の通り道である黄道と天の赤道の交差点である春分点を基点として24等分して導き出された15度ごとの黄経上の特定の点を太陽が通過する日に、節気と中気を交互に配置していく方法で、「空間分割法」とも呼ばれています。この方法では、太陽を回る地球の軌道が楕円形であるため、節気間の日数が不均等になります。冬至のころは地球が公転軌道上の近日点に位置するため、太陽が黄経上の15度を移動する速度が速くなり節気間の日数は14日余り、逆に夏至のころは移動速度が遅くなり16日余りとなります。日数が不均等になる不便さはありますが、太陽の実際の位置を反映するため、それによるメリットも少なくありません。

 

平気法では、すべての中気が太陰太陽暦による月と対応し、中気を含まない月を必ず閏月として設定することができますが、定気法ではこのルールが崩れます。節気間の日数が不均衡になるため、ひと月の中に中気が2回含まれることや、逆に中気を含まない月が増えてしまうこともあります。そこで、定気法では、いくつかの月が中気を含めばよいと定義することで、中気を含まない月であっても閏月とならない場合が認められることになります。

 

昔の暦は平気法が一般的でしたが、日本では江戸時代の天保暦〔弘化元年(1844年)〕から定気法が採用されましたが、中国では清の時憲暦(1644年)から定気法が取り入れられています。現在でも二十四節気はこの定気法に基づいて決められています。

 

次回は、この定気法が生み出す矛盾、「旧暦2033年問題」についてお話ししたいと思います。

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2018年1月19日 10:25に書いたブログ記事です。

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