おはようございます。昨日降っていた雨も止み、薄曇りの朝を迎えた東京ですが、どことなく街全体に活気が感じられません。日本全体がどこかおかしな方向に向かっているような気がしてなりません。最近の地震や火山の噴火が続いていることと関係しているのかもしれません。
さて、まだまだ続く中国の水に関するお話ですが、本日は北京の観光名所の一つである北海公園に秘められた高度な排水システムについてご紹介したいと思います。
北海公園は北京の中心にある紫禁城(故宮博物院)の北西に隣接する公園です。その南側には中国共産党や中国政府の指導者層が住む中南海があります。北海という池を中心とした公園になっており、市民の憩いの場にもなっています。
従来、あまり雨の降らなかった北京ですが、ここ最近はスコールのような大雨に見舞われることが多くなりました。それでも東京に比べればまだ降水量は少ないのですが、短時間に大量に降るケースも見られます。
私が北京に駐在したばかりの2012年7月には、1951年の観測以来最大の豪雨に見舞われ、十数時間の降水量は北京市全体で170ミリ、都心部では210ミリを超え、房山などの郊外の山間部では460ミリに達したところもあり、総面積の9割近くが浸水の被害に遭ったとのことです。私も東京本部から出張で北京に来ていた役員を市内から空港まで見送った際に、空港では掲示板の国内線フライトが突然すべて"delay"の表示に変わり、市内に帰る高速道路がまるで川のように水浸しになっていたことを覚えています。
このようなときにでさえ、まったくと言っていいほど浸水の被害がなかった場所があるというのですから驚きです。それが先に紹介した北海公園内の「団城」と呼ばれるところです。
団城は、北海公園の南門の西側にある長円形の丘を囲んだ小さな要塞です。煉瓦の城壁に囲まれ、城壁は高さ4.6メートル、長さ276メートルで、団城の面積は4,500平方メートルです。
紫禁城や天壇公園など北京の名だたる古い建築物にはいずれも排水口が設置されていますが、この団城の外壁には排水口はなく、地面にも排水溝が身当りません。それなのに、先ほどご紹介した豪雨の際には地面が少し濡れただけだったのです。
この団城が造られたのは今から600年ほど前の明の時代です。さて、如何なる仕掛けでこのような奇跡が起きたのでしょうか? この続きは次回のお楽しみにしたいと思います。
(本稿は雑誌『日中経協ジャーナル』2012年11月号「現地便り」に掲載された記事をリメイクしたものです。)
高見澤