おはようございます。先週土曜日、家内と長女を引き連れて江戸城の門めぐりをしてきました。江戸時代にはたくさんあった門も、いまでは11カ所を残すのみで、地名として残ってはいても実際の門はすでにありません。11カ所の門のうち、公開されて一般的に中に入ることができるのは6つの門です。皇居をぐるりと一周することになり、2時間弱の行程てすが、いろいろと楽しむことができました。その際使った資料を添付しておきますので、興味のある方はご覧ください。
さて、本日は、前回お知らせした通り、定気法が生み出す矛盾、すなわち「旧暦2033年問題」について説明していきたいと思います。
前回、定気法は実際の太陽黄経に基づいて節気を決めていることから、平気法によるすべての中気が太陰太陽暦における月と対応し、中気を含まない月を必ず閏月とする」というこの対応関係が崩れ、「定気法では、いくつかの月が中気を含めばよいと定義することで、中気を含まない月であっても閏月とならない場合が認められることになります」と説明しました。つまり、原則となる何カ所かの中気を定めることで、中気を含まない月でも閏月とならずに月が定められたり、ひと月に中気が2回あっても同様に月がどちらかに対応するよう決めたりすることができるようになります。
ご存知の通り、月は地球の周囲を公転しています。地球から見て太陽と同じ黄経の瞬間を「朔(さく)」といって「新月」になることは、以前にも紹介した通りです。朔を含む日をその月の1日とし、朔からその次の朔までの時間を「朔望月(さくぼうづき)」と言って、その時間は29.531日になります。このことから、旧暦の1カ月は29日または30日になります。夜間照明が月しかない時代、月の形を見て日付を知る太陰暦に方が太陽暦よりも便利だったのです。そこで、旧暦(天保暦)の月名を決める法則として、以下の条件が定められました。
①1カ月は月の満ち欠け(朔望月)によって29日または30日とする。
②1年は12カ月または13カ月である。13カ月ある月は閏月がある。
③二十四節気を中気と節にし、交互に配置する。
④中気のない月を閏月とする。
⑤春分を含む月は2月、秋分を含む月は8月、夏至を含む月は5月、冬至を含む月は11月とする。
朔望月である月の公転周期が29.531日であるのに対し、中気と中気の間は365.2422日÷12カ月→30.437日となり、朔望月より長くなります。つまり、1朔望月の間に中気を含まない月ができるので、その月が閏月となるわけです。メトン周期によると、19年に7回の閏月が入る計算になります。
これだけだと、時間分割する平気法では問題は起きないのですが、定気法では中気と中気の間が一定ではなく、1朔望月より短くなることがあり、天保暦では常に30.437日間隔で中気がやってくるわけではなく、多少の増減が生じます。つまり、1カ月の間に2回中気が入る月が出て来るのです。
そこで、定気法に従って2033年の朔の瞬間の日付・時刻を示してみます。それぞれの月名を仮にA~Hとし、先の①~⑤までの法則で具体的な月を配置してみましょう。
月 朔の時刻 含まれる中気とその時刻(グレゴリオ暦)
A月 2033/05/28
20:39 夏至 06/21 10:03
B月 2033/06/27
06:09 大暑 07/22 21:55
C月 2033/07/26
17:14 処暑 08/23 04:04
D月 2033/08/25
06:41 (無し)
E月 2033/09/23
22:41 秋分 09/23 01:53
F月 2033/10/23
16:30 霜降 10/23 11:27
G月 2033/11/22
10:40 小雪 11/22 09:15、冬至 12/21 22:44
H月 2033/12/22
03:48 大寒 2034/01/20 09:25
以上のA~H月を先の条件①~⑤に従って配置すると以下の通りになります。
A月は中気である夏至を含むので5月(⑤)
B月は次の中気である大暑を含むので6月(元々の決まり)
C月はその次の中気である処暑を含むので7月(元々の決まり)
D月は中気がないので閏7月(④)
E月は初日の午前中に秋分があるので8月(⑤)
F月はその次の中気がある霜降を含むので9月(元々のきまり)
G月は元々の決まりに従えばその次の中気である小雪を含むので10月ですが、⑤に従うと中気である冬至を含むので11月にしなければなりません。
H月は冬至の次の中気ですから⑤に従えば12月となります。
つまり、G月には小雪から冬至までの間隔が1朔望月より短くなるので2つの中気が含まれることになってしまうのです。本来、1年が12カ月なのに中気のない閏月が入るために、存在できない月名が生じてしまいます。これが旧暦2033年問題と言われるものです。この解決方法として、同じ定気法を採用している中国の時憲暦での方法、すなわち冬至を含む月から次の冬至を含む月までの間に13カ月ある場合、中気が入らない最初のつきを閏月とする決まりに従う方法があります。また、冬至を優先するか、或いは秋分を優先するかによっても閏月の入り方に違いが出てきます。まあ、これは決めの問題であって、一つ決まりを追加すれば解決する問題でもあり、そう深刻になる必要はないかもしれません。
ちなみに、平気法では中気と中気の間が1朔望月より短くなることはないので、順番通り中気を置いていくと次のようになります。
A月→5月(夏至)
B月→6月(大暑)
C月→7月(処暑)
D月→8月(秋分)
E月→9月(霜降)
F月→10月(小雪)
G月→11月(冬至)
H月→閏11月(無し)
高見澤