東藝術倶楽部瓦版 20160530 : 2200 年前の驚くべき土木技術

 

おはようございます。今朝の東京都心は割と大粒の雨が降っています。部屋の中にいても、雨脚の音が聞こえてきます。

先週木曜日と金曜日は朝から外部機関への立ち寄りで時間がなかったものですから、勝手ながら瓦版をお休み致しました。ご理解の程、よろしくお願い致します。

 

さて、前回ご紹介いたしました「霊渠」ですが、その技術的な高さの一端を解説したいと思います。

霊渠には河の水の分流させる「犂の口(鋤嘴)」、河の水量と水位を調節する「大天秤」及び「小天秤」と「泄水天秤」、「南渠」と「北渠」の二本に分かれた運河、「水門(陡門)」などの施設があります。

 

「犂の口」は長方形の石を犂の刃のように鋭く積み上げられた形をしており、湘江の水を南北二つの運河に分流させます。「犂の口」は分流のほか、「大天秤」と「小天秤」を洪水から守る役割も果たしています。

分流された水は「大天秤」と「小天秤」で水量と水位が調整されます。ともに「人」字型の構造をしており、南北両側の運河とつながっていて、「犂の口」とこの二つの「天秤」によって、湘江の水の3割を南渠から漓江に流し、7割を北渠から湘江へ再び戻すように設計されています。

 

北側の「大天秤」の長さは344メートル、南側の「小天秤」は130メートルで、高さはそれぞれ2~2.4メートル、幅は1723メートルです。両「天秤」の基礎は水に強いとされる松の木が使われており、その上に長方形の石がぎっしりと敷き詰められ、その石の表面の溝にそって溶かされた銑鉄が注がれ丈夫な鉄の網のようになっていて、それでしっかりと固定されています。

両「天秤」ともに内堤と外堤からなっていて、内堤の勾配が外堤より高くなっています。湘江から流れてくる水を堰き止め、両岸に接続する運河に水が流れる仕組みなので、常に船の運航が可能な水位(平時の推進は約1.5メートル)が確保され、水量が多くなると余分な水が両「天秤」を超えて元々の湘江に流れ込むようになっています。

「泄水天秤」は南北二つの運河にあり、大小両「天秤」を補完する役割を果たします。

 

「水門」は南北二つの運河に設置され、水門の開閉により水位を調整して船を通航させる役割を担っています。水位が低く、流れが速い場所に造られ、最も多いときには36カ所もあったとのことです。

 

今から2200年も前のこうした土木技術の水準の高さには、驚かされるばかりです。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年5月30日 20:30に書いたブログ記事です。

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