モノづくりの原点は浮世絵にあり!

 

おはようございます。

ゴールデンウイークもほぼ終わり、本日休みをとっていれば明日、明後日と連休の方もおられるかと思いますが、私は調査部長という肩書の手前もあり、取り敢えずカレンダー通りに出勤しています。

一昨日、家内と息子を連れて、久しぶりに藤沢の江ノ島までドライブに行き、海風に当ってきましたが、それ以外は、会報の原稿見直しや中国メディアから依頼された原稿執筆のための資料読み込みでずっと自宅にいた次第です。

さて、これまで日本独自のビジネススタイルである「モノづくり」と「おもてなし」について皆さんにご紹介してきましたが、本日はこのビジネスモデルこそが江戸時代にあったというお話をしたいと思います。

 

江戸時代に完成された庶民文化の代表の一つと言えば「浮世絵(錦絵)」ですが、皆さんご存知の通り、浮世絵は多色刷りの版画です。これには、絵を描く絵師、版木を絵の通りに掘る彫師、版木を使って紙に印刷する刷師の神業ともいえる三位一体の技術が必要になります。

 

一般的には、浮世絵といえば北斎や歌麿、豊国、広重等の絵師の名前が前面に出てきますので、当然絵師の存在なくしては浮世絵ができないのは当然です。しかも、その絵の芸術性の高さは、世界の美術館が認めるところで、大事に保管されていることは周知の事実です。

しかし、実際には絵師だけで浮世絵は生まれません。浮世絵を知る人からすれば、彫師や刷師が絵師とは別に存在していて、その役割の重要さがよく分かるかと思います。

 

現代の印刷のカラーといえば、基本三原色と白の四色の組み合わせで多くの色を表現していますが、浮世絵の色は天然顔料を使っていますので、数色、時には十数色の顔料を使ってさまざまな色を表現しています。そのためには、色ごとに版木を用意しなければなりません。通常、版木は100から200枚の紙を刷るので、それなりに堅いものでなくてはならず、通常は乾燥させた桜の木を使います。そこに絵師が描いた絵に従って細かな微妙な線を掘っていくのですから、その技術は相当なものです。子供のころ、彫刻刀を使って柔らかい木やゴムを彫った記憶がありますが、それでもうまく彫れず、指や手を切ってしまった経験を持つ方も少なくないと思います。

 

さらに、たくさんの色の着いた版木を1枚の紙に何枚も重ねて作品を仕上げるのですが、細かい線に寸分違いなく色をムラなく載せていくのですから、これもまた高い技術がなければできません。しかも、艶を出したり凹凸をつけるなど、空刷りといわれるような特異な印刷の手法もあり、彼らの水準の高さには頭が下がる思いです。

 

このように絵師、刷師、彫師の三位一体の連携によって生まれたのが浮世絵なのです。

 

翻って現代の日本のモノづくりに目を向けてみましょう。一枚の設計図を基に多くの中小企業が作った部品を集めて組み合わせると、寸分の違いもなくぴったりと当てはまり、ものの見事に一つの完成品が出来上がります。家電にせよ、自動車にせよ、こうしてありとあらゆるモノを作り上げてきたのがこれまでの日本企業でした。それが日本を世界第二位(今は中国に抜かれ三位ですが...)の経済大国にまで押し上げたのです。

もちろん中国人も優秀な人がたくさんいます。芸術家にせよ、技術者にせよ、一人一人の技術は世界的にも相当高い水準の人も少なくありません。しかし、それはあくまでも個々人の話で、日本企業のように多くの人が協力・連携してモノを仕上げるとなると別です。中国製品の場合、一部が壊れたので部品を取り換えようと思っても、サイズが微妙に異なり、叩いたり削ったりして無理やりはめ込む、なんていう例は数え切れません。

 

しかもですよ、このように高い技術で作られた浮世絵が、当時は呉服屋のチラシ(美人画)や歌舞伎役者のプロマイド(歌舞伎絵)、旅行のガイドブック(風景画)、エロ本(春画)などであったというのですから、その文化水準の高さには脱帽です。そうしたものが、今では立派な芸術作品として世界に名を馳せているのですから...

 

江戸時代に培われた「モノづくり」の原点は、浮世絵にあったというお話。ご納得いただけましたでしょうか?

 

高見澤

2016.5.6

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年5月 6日 22:55に書いたブログ記事です。

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