東藝術倶楽部瓦版 20160601 :団城の秘密

 

おはようございます。昨夜はスーパーマーズ、ここ直近10年で最も火星が近い距離にあり、地球からの火星観測には絶好のチャンスであったにもかかわらず、天気は曇り。残念だったと思う方も少なくなかったのではないでしょうか。今朝の東京は薄曇りですが、これから午後にかけて天気は回復し、暑くなるとの予報です。

 

さて、本日は、前回のお話を受け、団城の排水の秘密に迫りたいと思います。

 

団城には「白衣将軍」と呼ばれる古木があります。その古木が2001年に病気となり、専門家がそれを診断した際に、偶然この排水システムが発見されました。団城の地面には青い煉瓦が敷き詰められ、その地下に暗渠を用いた高度な排水システムがあったのです。

 

団城の地勢は北側が高く、南側が低くなっています。地面に敷かれた煉瓦は上が大きく下が小さい「逆階段型」となっており、一つ一つの煉瓦がダムの役割を果たし、煉瓦と煉瓦の間には大きな隙間が空いていて、降った雨はその隙間を縫って地下に流れ込みます。

地下に流れ込んだ水は、地勢に沿って石造りの「水眼」と呼ばれる穴に流れ込みます。団城には合計11カ所の「水眼」があり、古木の周辺に設置されています。「水眼」の下には縦井戸があり、それらは暗渠でつながっています。暗渠は青い煉瓦で造られ、その高さは80150センチ。

 

雨水が暗渠に流れ込むと地下を流れる川になります。すべての「水眼」は暗渠の要所要所に設置されており、暗渠は「C」字型になっていて、雨水が団城の中を流れる時間をできるだけ長くする仕掛けだそうです。大雨のときは雨水が暗渠に沿って反時計回りで流れ去り、小雨のときは土壌に浸み込んだ水が飽和状態になった後、暗渠に流れ込む仕組みです。限られた雨水資源を最大限活用しようとしていたのですね。

 

また、団城の土は穀物の殻や石灰で造られており、通気性、通水性に富み、雨水が速やかに地面に浸み込むようになっています。団城の浸透・排水システムと土壌は雨水の総合的な調節作用を果たしているばかりではなく、水、大気、温度、有機物など植物の成長に欠かせない要素をうまく調和させる機能をも持ち合わせているのです。数百年の間、団城の古木等植物の成長を促す良好な環境も創り出してきました。

 

北京は水不足が深刻で、地表水の約9割が開発済み、地下水も過剰採取により地下水位の低下や地盤沈下が懸念されています。その一方で豪雨による浸水被害が発生しているわけですから、その豪雨時の水を上手に溜めて利用する仕組みがあれば、一石二鳥にも三鳥にもなるのです。

600年前の技術、驚かされる東洋の知恵に学ばなければなりません。

 

(本稿は雑誌『日中経協ジャーナル』201211月号「現地便り」に掲載された記事をリメイクしたものです。)

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2016年6月 1日 15:06に書いたブログ記事です。

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