東藝術倶楽部瓦版 20170803:夏も近づく八十八夜、八十八夜の別れ霜

 

おはようございます。今朝の東京も比較的涼しい感じがしますが、これが次第に暑さが増し、日中は身体を壊しそうなほどの猛暑になります。電車の中で、以前書いてた「江戸の町」という文書を読み返してみて、今さらながら江戸の町の暑さ対策に感銘を覚え直したところです。

 

さて、「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る」と、お馴染みの文部省唱歌「茶摘み」の一節、ということで、本日のテーマは「雑節」の一つでもある「八十八夜」です。

 

八十八夜というのは、二十四節気の一つである立春から数えて八十八日目、新暦では5月1、2日頃になります。もう少しで立夏になる時期で、農事の上では重要な節目と考えられていました。5月初旬は季節的には爽やかな時期で、夏までにはまだほど遠いのですが、「夏も近づく」というのは立夏、すなわち暦の上での夏の到来を詠ったものです。

 

昔から「八十八夜の別れ霜」、「八十八夜の毒霜」、「八十八夜(九十九夜)の泣き霜」と言われるように、特に山間部では遅霜(晩霜)の時期でもあります。種まき、茶摘み、養蚕など農家にとって、この遅霜が何よりも恐ろしく、せっかく新芽を出して成長しつつある作物に甚大な被害を与える恐れがあります。こうした被害に対する対策を注意喚起するために、暦に記されるようになったとも言われています。茶摘みや苗代の籾蒔きなどの目安にもされています。

 

この八十八夜は、中国の暦には見られず、日本独特のものだそうです。もともと暦注にはなく、一説によれば、渋川春海が貞享暦を作成した際(1684年)に、暦に記載することにしたと言われていますが、それ以前に作成された伊勢暦(1656年)には、すでに八十八夜の記載が見られることから、昔からあった八十八夜の習慣を、渋川が官暦に正式に雑節として盛り込んだのではないかと言われています。

 

「八十八」を組み合わせて一つの字にすると、「米」となります。88歳のお祝いが「米寿」と呼ばれるのはこのためです。「八」の字は末広がりで縁起の良い数字でもあることから、農耕にとって吉日されています。

 

先ほどの文部省唱歌「茶摘み」に関連して、お茶について少し解説してきましょう。お茶は1年に3回ほど摘まれます。4月下旬から5月下旬に、その年に初めて萌え出た新芽からつくられるお茶がいわゆる「一番茶」で、「新茶」と呼ばれるものです。その茶葉は秋から春にかけて蓄えられた栄養素がたっぷり含まれているので、最も香味豊かなお茶として喜ばれています。ですから、八十八夜に摘まれた新茶は、縁起物としても珍重され、神棚に供える風習もあります。そして6月中旬から7月上旬に摘まれるのが「二番茶」、7月中旬から8月下旬が「三番茶」となります。

 

大陸気候で相当に乾燥している中国では、お茶は絶対に欠かせません。最近ではスターバックス(星巴克)の普及もあってコーヒーもよく飲まれていますが、依然としてお茶の文化は廃れてはいません。日本でもおなじみの『三国志演義』にも登場しますが、古来お茶は嗜好品ではなく薬として珍重されていました。確かに100グラム何万円もするような超高級茶は、正に薬とした思えないような高貴で清々しい味わいで、心身ともにすっきりした感覚を覚えます。ただ、お茶を入れる水は、そのお茶が採れた土地の湧水が最良です。どんなに美味しい日本茶でも中国の水は合いませんし、高級な中国茶でも日本の水に合わないのは、すでに私自身経験済みです。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年8月 3日 10:46に書いたブログ記事です。

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