東藝術倶楽部瓦版 20170817:六月の地さへ割けて照る日にも 我が袖乾めや君に逢はずして-水無月の語源は?

 

おはようございます。今朝の東京は曇り、夜中に少し降ったのでしょうか、道路が濡れていました。8月に入って昨日で16日連続で雨、今日も降れば17日連続ということになります。

 

さて、本日からは6月の年中行事に移りたいと思います。

旧暦6月の和風月名は「水無月(みなづき、みなつき)」です。新暦では7月頃にあたり、6月から7月にかけて梅雨の時期になるのに、「水の無い月」というのも変な話しですが、『万葉集』に「六月(みなづき)の地(つち)さへ割けて照る日にも 我が袖乾(ひ)めや君に逢はずして」(作者不詳)という歌があります。真夏の日照りで地割れが生じるような旧暦6月の気候を詠んだものとされ、梅雨の後の暑さで水が涸れるということから「ミズナシ月」として、「水無月」の字をあてたのではないかという説があります。江戸時代中期の朱子学者・新井白石〔明暦3年(1657年)~享保10年(1725年)〕などはこの説を主張しています(『東雅』)。

 

一方これとは逆に、田植えも済んで、田に水を張る「水張り月(みずはりづき)」という説もあります。江戸時代の国学者・谷川士清〔宝永6年(1709年)~安永5年(1776年)〕などはこちらの説を唱えています(『和訓栞』)。

 

もう一つ、同じく農業に関連しますが、田植えも終わり、大きな農作業もすべてしつくしたという意味から「皆仕尽(みなしつき)」、或いは「皆尽月(みなつきづき)」の略であるとの説があります(『奥義抄』、『二中歴』)。

 

さらに、旧暦6月は雷が多いことから、「加美那利月(かみなりづき)の上下(カとリ)を略けり」という説〔賀茂真淵:元禄10年(1697年)~明和6年(1769年)『語意考』〕もあるようです。

 

この他にも、「田水乃月(たみのつき)」、「水悩月(みずなやみづき)」、「水月(みなづき)」などを語源とする説もあり、正直なところどれが真相なのかは分かりません。

 

ただ、多くの説が「水」に関係していることや、旧暦6月はやはり梅雨の季節に当ることを考えれば、「水無月」の「無」は当て字であって、やはり「水の月」であったと解釈するのが妥当ではないでしょうか。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年8月17日 09:52に書いたブログ記事です。

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