東藝術倶楽部瓦版 20170905:半夏生前なら半作ー半夏の生える頃

 

おはようございます。今朝の東京は曇り、明け方雨が降ったのでしょうか、道路が濡れていました。やはりこのまま暑さが戻らず、本格的な秋を迎えることになるのでしょうか?

 

さて、本日のテーマは「半夏生(はんげしょう)」です。以前お話しした七十二候の末候にあたり、雑節の一つにも数えられています。二十四節気の夏至が太陽黄経90度で、北半球において最も昼間が長くなる日であることはご存じかと思いますが、夏至から11日目にあたり、太陽黄経100度を通過する日がこの「半夏生」となります。新暦では7月2日頃です。

 

半夏生は、日本では梅雨の終期、田植えもそろそろ終わる頃で、農家の人たちは、どんなに天候不順であったとしても、この日までに田植えを済ませるという習慣がありました。江戸時代の農民にとっては、八十八夜とともに重要な雑節の一つでした。「半夏生前なら半作」という言い伝えがあり、田植えが遅れても半夏生前なら通常の場合の半分は収穫できるという教えだそうです。

 

「半夏」とは、もともと仏教では先日紹介した90日にわたる「夏安居」の中間、45日目を表す言葉です。また、畑に生えるサトイモ科の多年草・カラスビシャクのことでもあり、緑色をおびた鞘のある毒草として知られていますが、この半夏が生える時期という意味もあるそうです。半夏の球茎は生薬として鎮嘔薬・鎮吐薬としても用いられ、その茎は「ほぐそみ」というつわり対策の漢方薬としても使われています。

 

日本では、夏至に関連した特段の行事は行われていませんが、この半夏生の日には、天から毒気が降り、大地が陰毒を含んで毒草を生じるという言い伝えがあり、筍やワラビ、野菜を食べることを禁じたり、竹林に入ることや種まきを禁じたりといった物忌みの風習があります。

 

半夏生の時期、福井県大野市辺りでは、江戸時代から焼き鯖を食べる習慣があります。鯖の旬は脂ののる秋なので、時期的には早いような気もしますが、当時の大野藩主が漁村の年貢軽減と田植えで疲れた農民の栄養補給のために鯖を食べることを推奨する令書を出し、それを見た町の魚屋が半夏生に焼いた鯖を売り出したことがきっかけとなったとのことです。現地ではこの鯖のことを「半夏生鯖(はんげっしょさば)」と呼んでいて、今でも焼き鯖が食べられています。

 

高見澤

2021年1月

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年9月 5日 10:17に書いたブログ記事です。

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