東藝術倶楽部瓦版 20171220:年神様と田の神様ー「事納め」、「事始め」

 

おはようございます。昨日の風邪も熱は下がったのですが、喉の痛みがとれず相変わらず咳に悩まされています。とはいえ、仕事が溜まってしまうので、今日は何とか出勤しているところです。

 

さて、本日は「事納め」、「事始め」について紹介したいと思います。旧暦12月8日は、「納め八日」などといって、物忌みの日とされ、仕事を休み、1年間の労をねぎらう事納めの日とされていました。また、12月8日に加え、2月8日の両日を「事八日(ことようか)」と呼んで、様々な行事が行われてきました。納め八日は、読んで字のごとく物事を納める日で、事八日は物事を始めたり納めたりする大事な日のことを指します。

 

この辺りの解説は、以前「針供養」のところで、少し紹介したかと思いますが、すでに忘れている人がほとんどだと思いますので、改めて説明しておきますと、使い古した針や折れた針をを豆腐やコンニャクに刺して、針仕事の上達を祈願しつつ感謝・供養する「針供養(針納め、針休み)」も関西では12月8日に行われます。ちなみに関東では2月8日です。

 

事納めや事始めの「事」ですが、これはもともと「祭り」、或いは「祭り事」を表す言葉で、「コトノカミ」を祀る祭りのことです。その祭りが12月8日と2月8日に行われ、「事八日」、「事の日」と呼ばれました。

 

事八日に関して、祀る神が「年神様」か「田の神様」かで、事始めと事納めの時期が逆転します。この時期の違いは、始める「事」が新年を迎える神の「事」か、農耕に勤しむ人の「事」かによる違いに由来しています。

 

年を司る神を年神様といい、その年神様を迎えるために正月行事の準備を始めるのが12月8日の事始めで、年越しの神事が始まる日というわけです。そして、後片付けなどすべて納めるのが2月8日の事納めになります。こうして年神様にまつわる一連の「事」が終わると、春を迎え田畑を耕す時期になります。

 

もちろん事始めの日は地方によって異なり、関西では1213日が事始め(正月事始め)の日とされ、茶道、舞踏、演劇、花柳界などでは、「事始の餅」と呼ばれる鏡餅を持参して、師匠筋に1年の挨拶に行く習慣があります。また、江戸時代には1213日は大吉日とされた鬼宿日にあたることから、この日が江戸城の「御煤納め」と定められ、「正月事始め」として煤払いや松迎えなどの正月の準備にとりかかり始めました。

 

一方、年神様を迎えるための正月行事が終わって、人の日常生活が始まるのが旧暦2月8日、即ち新暦では3月中旬になります。春が来て暖かくなり、農作業が始まるのがこの2月8日の田の神様にとっての事始めになります。年神様を迎える正月行事という神事の期間が終われば、人々にとっての日常としての田の神様の期間になることになります。一方の始まりは、別の一方の終わりになるという循環の真理がそこに見られるわけです。

 

尚、事八日には「お事汁」を食べる習慣があります。これは事八日に無病息災を祈って食べる野菜たっぷりの味噌汁のことです。別名「六質汁(むしつじる)」とも呼ばれ、芋、ニンジン、大根、ゴボウ、小豆、コンニャクの6種類の具を入れたそうです。ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な伝統的な健康食です。

 

ちなみに俳句の世界では、事納め、事始めは冬の季語で、針供養は春の季語になっています。

 

高見澤

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このページは、東藝術倶楽部広報が2017年12月20日 10:10に書いたブログ記事です。

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