おはようございます。昨夜は皆既月食、夜中の11時頃だったでしょうか、内部の会食を終えて帰宅する際、幸い東京でも赤茶けた月が欠けているのをみることができました。今のような精密な天体望遠鏡のない江戸時代、こうした食を予測して当てるのも、幕府天文方の重要な役割でしたが、その複雑な天体の動きを計算する彼らの知識と能力には驚かされます。
さて、本日は人生儀礼の第2番目、「お七夜(おしちや)」について説明していきたいと思います。お七夜は、「命名式(めいめいしき)」、「お七夜の祝い」、「名付け祝い」とも言われ、生後7日目に行う祝いの儀式です。生まれた子供が無事1週間過ごせたことを祝うとともに、子供に名を付け、社会の一員として仲間入りしたことを認めてもらう意味合いが込められています。
昔、日本では、誕生間もない新生児の生命は産神(うぶがみ)の保護下にあると信じられていました。実際には、衛生・栄養事情の関係から新生児が7日目を迎えることなく亡くなってしまうことも少なくないことから、このお七夜は子供の無事な成長を確かめる節目の日でもあったわけです。
産神は「うぶのかみ」とも呼ばれ、出産の前後を通して妊婦や新生児を見守ってくれるという神のことです。古来日本では、「産の忌(いみ)」があり、お産は穢れ多いものとして神参りを遠慮させられていましたが、産神だけは産屋の忌の中に入って守ってくれると信じられていました。
お七夜に名付けを怠ると、雷鳴のときに生まれた子は目や耳が不自由になるとか、地震があると頭が割れるなどという迷信も残されています。そのため、昔は仮の名を付けたりすることもありました。今では、戸籍法に基づいて、父母が生後3日目から14日目までに役所への出生届を提出するとともに、名前を届け出ることになっているので、生後2週間以内に命名すればよいのですが、風習によってお七夜に実施されることが一般的なようです。
子供が生まれてからの数え方ですが、生まれた日を1日目として数える場合と、生まれた日を0日として翌日を1日として数える場合があります。皇室の儀式などを踏まえると、本来は生まれた日を1日として数えていたと考えるのが妥当かと思います。
名前が決まると、名付け親は奉書などの白い紙に清書し(命名書)、神棚や仏壇に供えたり、床の間に貼っておく風習があります。また、名前を小石に書いて氏神に奉納する地方もあるようです。
子供の出生の祝いは、元々は平安時代の頃から貴族の間で子供が生まれた日を「初夜」、3日目を「三夜」、5日目を「五夜」、7日目を「七夜」、9日目を「九夜」といって、奇数日に出産を祝う「産立ち(うぶだち)の祝い」、或いは「うぶやしない」という行事が行われていました。それが江戸時代になって、「七夜」の風習だけが残り、この日を子供の命名のお披露目として、庶民の間にもこの行事が広まっていきました。
出産7日目となると、産婦が床上げをする日としているところが多く、産婦の忌が晴れる初めの段階となっています。父親の忌もこの日で晴れるとしています。
高見澤