おはようございます。台風21号はすでに北海道の西側を北上しているようですが、近畿地方を中心に大きな被害をもたらしました。気候変動による台風の大型化が今後も懸念されるところですが、その気候変動の原因がどこにあるのか。政治的要素を一切排除して、真の科学的見地からつきとめて対策を講じる必要があります。対策を誤ると、被害は更に広がることになるのですから、そこは慎重に事を運ぶべきではないでしょうか。
さて、本日は江戸町奉行所の裁判に係る与力・同心について紹介したいと思います。町奉行所が今の地方裁判所の役割も果たしていたことは、以前にもお話しした通りです。町奉行所の裁判では、形式的には初審と結審(判決言い渡し)は町奉行が行い、実際の取り調べや判例の調査、文書作成等はそれぞれ担当の与力・同心が行っていました。
町奉行所の裁判実務の中で最も重要な役割を果たしたのが「吟味方(ぎんみがた)与力」です。「吟味与力」、「御詮議役与力」、「吟味詰番」とも呼ばれ、民事・刑事の両方の裁判の審理と裁判を行い、結審に向けた事務処理も担当していました。町奉行所玄関左側に3カ所ある「詮議所」で詮議を行っていました。吟味方与力は世襲で務めることが一般的で、まさに取り調べのプロといったところで、ほとんどの犯罪者は拷問をせずに自白させることができたと言われています。
死罪に相当する犯罪の容疑者が自白しない場合に限り拷問を用いることができましたが、拷問を行うには町奉行に申請して老中の許可を得なければなりませんでした。ですから、拷問を用いなければならないことは、吟味方役にとって失点という評価につながることもあったようです。老中から拷問の許可が下りると、吟味方役が直接牢屋敷まで出向き、拷問執行の監督を行いました。実際に拷問を行うのは牢屋奉行所の同心です。江戸時代の拷問には、笞打(むちうち)、石抱(いしだき)、海老責(えびぜめ)、釣責(つりぜめ)の4種類があり、このうち笞打と石抱は「責問(せめどい)」といって老中の許可は必要なく、海老責と釣責に対して老中の許可が必要でした。また、笞打、石抱、海老責の3種を指して「牢問(ろうどい)」と呼び、拷問としての釣責と分ける言い方もあるようです。拷問については、改めて説明の機会を設けますが、罪状が明白なのに自白しない容疑者に対しては、結審として刑罰の許可を取る「察斗詰(さっとづめ)」という制度もありましたが、極めて稀だったようです。
吟味方与力による詮議は「一事件一担当与力」が原則で、起訴から結審、判決、刑罰執行まで担当与力が一人で受け持っていましたが、稀に交替させられることもあったようです。吟味方与力の定員は、本役4名、助役4名、見習い2名の計10名でした。吟味方与力の配下として「吟味方同心」がおり、その定員は20名でした。
高見澤